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魔法の記録

「クリスティーナさんの護衛の問題は一旦置いて、午後の回診と治療を済ませてしまおう」


 ハワード医師に促され、三人は午前中に回りきれなかった病室を訪れた。容体を確認し、必要ならば回復魔法を行使していく。軽傷者が多かったので、カミラとラウラは別々に回復魔法を行使し、カミラの魔力が切れるとラウラが補充するというコンビネーションで、どんどんと治療を進めていった。


 ハワード医師は、あまり回復魔法を多用することをよしとしない医師だった。だが、軽症者を治療して次々と退院させることが、クリスティーナの警備を楽にすることにもつながると考え、二人を止めることはしなかった。 今回の事故とは関係なく入院していた患者も、回復魔法によって次々と回復していったので、これからの数日で入院患者はかなり減る見通しが立ってきた。


 ハワード医師は、二人に釘を刺した。 「君たちから見て治療が終わったといっても、主治医が退院を許可しない限り退院できないから、その点は納得してほしい。君たちが施した回復魔法の内容は、私が記録して主治医に引き継ぐ。後でメモを見せるから、誤りがあったり不足があったら教えてほしい。体内での魔法の働きは、見ているだけでは分からないからね」


 魔法の力を最大限に活かしつつ、医学的な視点も忘れない。ハワード医師の指示は、魔法と医学のハイブリッド治療という、新しい医療の形を模索する彼らの道標となっていた。


 翌朝、クリスティーナ姉さんの意識が戻ったと連絡を受け、ラウラは朝食後すぐに病室へと向かった。そこにはすでにカミラとハワード医師がいて、姉さんの体の状態をチェックしていた。


「脈拍は正常、熱は微熱にまで下がっているね」 ハワード医師がバイタルをチェックしていく。


「魔法による観察によると、腎臓の機能はまだ半分まで戻っていないし、相当修復に時間がかかりそうです」 「肝臓の方は、すでに腫れも引いています」


 ハワード医師が、カミラの報告に頷く。 「肝臓の腫れが引いているのは、腹部の触診でも分かるね。黄疸も出ていないし、肝機能は正常そうだ。尿の量がまだ少ないのは、腎機能の回復が遅れているせいかな? 浮腫も弱いながら出ているね」


 二人は、どんどんと状況を共有しているようだった。ラウラは、「腎機能の回復の見込みは?」と尋ねたが、時間はかかるが回復するだろう、ということだけだった。


「回復魔法で回復を手伝うことはできますか?」 ラウラが尋ねると、ハワード医師は彼女の目を見て言った。 「感染症が起きた場合に、回復魔法で治すことはできるかい? もし出来たらありがたいんだけど」


 ラウラの胸に、新たな問いが投げかけられた。回復魔法の可能性は、まだ広がり続ける。姉の意識が戻った喜びと、目の前の課題。その両方を抱きしめながら、ラウラは、魔法使いとしての道を、また一歩進んでいく。


「姉さん、痛みはあるの?」 ラウラが尋ねると、「少しね」とクリスティーナは弱々しく答えた。 「ずいぶん意識を失っていたみたいね」 クリスティーナの言葉には、まだかすかな疲労が滲んでいた。


「今は回復が一番よ。それから、家族も見舞いに来たわ。面会謝絶中だったから、姉さんには会えていないけどね」 ラウラは、姉に優しく語りかけた。 「私は今、この病院に常駐しているから、呼んでくれればすぐに来るわ」


「ハワード先生、家族に意識が戻ったことを伝えてもよろしいでしょうか」 ラウラが尋ねると、ハワード医師は頷いた。 「それは構わないが、面会謝絶はまだしばらく続くよ」


「はい、見舞いには来ないように伝えます」 ラウラはそう答えた。姉の意識が戻った喜びと、まだ続く回復への道のり。その両方を胸に抱きながら、ラウラは、家族のもとへ知らせを届けるために、病室を後にした。


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