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奇跡の評価

 事故は、切通しの道路を建設中に、擁壁が破壊されて大規模な土砂崩れとなったのだという。擁壁の工事に手抜きがなかったか、当局の調査が入ったと伝えられた。長く苦しい夜が明け、新しい一日が始まろうとしていたが、その影はまだ深く、人々の心に重くのしかかっていた。


 翌朝、朝食を終えたカミラとラウラは、ハワード医師と共に所長室へと向かった。 ハンス・フランク所長は、二人にねぎらいの言葉をかけ、勲章を申請した旨を伝えた。


「君たちは夢中で治療にあたっていたので、気がつかなかったかもしれないが、医師が見放した怪我人を何人も救ったんだよ。今の医学では救えない患者をね。人はこれを奇跡と呼ぶんだ」 フランク所長は、熱く語った。


 聖女カミラは、その言葉に静かに答えた。 「人々は私たちに奇跡を求めます。ですが、私たちからすると、当然のことをしたまでで、勲章を賜るようなことではありません。もし奇跡というのであれば、ここにいるラウラが魔力の補充をしてくれたからこそ成しえたことで、ラウラ二等軍曹こそ真の英雄でした」


 突然カミラに称賛されて、ラウラは戸惑った。 「私こそ、単なる魔力の供給者であり、回復魔法はほとんど聖女カミラの成した奇跡の技です」 ラウラも必死に訴えた。


 フランク所長は、二人のやり取りに笑いながら言った。 「二人の言いたいことは分かったよ。聖女カミラの功績は教会へ、ラウラ二等軍曹の功績は陸軍に伝えておくから」


 フランク所長は真剣な表情に戻り、新たに指示を出した。 「二人には、これから病室を回ってもらって、昨日は外科で治療した患者の回復を図ってほしい。もちろん、無理はしない範囲でではあるが、外科手術で命はつないだものの、きわどい患者もまだいると聞いているので、そうした患者の容態の安定を優先してほしい」


 二人は声をそろえて「分かりました」と返事をした。奇跡という言葉の重みを感じながらも、彼らの心はただ一つ、患者の命を救うことへと向かっていた。


 ハワード医師と一緒に病室を回っていると、回復魔法ですぐに快方に向かいそうな怪我人が何人もいた。骨折で骨がつくのを待っているような患者は、回復魔法を使えばすぐに治せそうだった。


 ハワード医師は言った。 「時間が経てば自然と治るものは、そのままでいい。炎症性の発熱が起きているような場合は、炎症の原因を取り除くようなことはできるかい? 内臓の損傷が起きている場合は、その治療をお願いしたい」


 確かに、骨折や打撲は外から見て分かりやすいが、体の中の傷は、昨日のような鉄火場状態では見落としがちになるだろう。ラウラとカミラは、発熱している患者を中心に魔法治療を行っていると、折れた肋骨が体内を傷つけている場合や、内臓の破損が見受けられる場合があった。 治療はカミラが中心に行い、カミラへの魔力補給をラウラが担うという、昨日からのコンビネーションが今日もよく機能した。ハワード医師は、魔法使いの連携を見て、「医療チームも見習わないとな」と独り言を言っていた。


 病室を回っていくと、ラウラの姉、クリスティーナのベッドがあった。 思わず「クリスティーナ姉さん……」と声が出たラウラだったが、カミラがすぐに動いた。 「内臓損傷の様子を改めて診断しましょう」 そう言って、カミラはクリスティーナに回復魔法をかけていった。


 高熱にうなされているクリスティーナであったが、カミラの診断は冷静だった。 「多くの臓器の機能が低下している危険な状態です。改めて傷んだ臓器に回復魔法をかけていくわね。ラウラ、魔力の補充をお願いね」


 ラウラは「よろこんで」と応じ、クリスティーナの治療が始まった。ハワード医師がカミラに「この患者がどんな状態か報告を」と促すと、カミラは続けた。 「腹部に強い圧迫を受けたようで、両方の腎臓が傷んでいます。また、肝臓の内部でも出血があります。昨日の時点で大きな破損は治したのですが、十分ではなかったようで、機能の低下が顕著で予断を許さない感じです」


 仲の良い姉が重篤な状態にあることに、ラウラは取り乱しそうだった。だが、魔力の供給を止めるわけにはいかない。彼女は必死に感情を押し殺し、治療に協力していた。


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