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外科医の視点

 カミラは、これまでの調査で分かったことを、かいつまんでハワード医師に話した。 「再生魔法の古い文献によると、大規模な再生は分割して、時間をかけて行うように書かれています。ですが、具体的にどのように分割するのがいいのか、患者の体力の回復を何で測ればいいのかなど、魔法使いだけでは判断しかねることが多くて、お医者様のご意見を伺いたいと考えています」


 ハワード医師は、その言葉に深く頷いた。 「その考え方は分かりやすいし、妥当だと思う。だが、中途半端な再生だと、末端の管理が必要になるね。止血や消毒は医療行為だから、医師の介在が不可欠になるだろう」


 そして、彼は具体的な例を挙げた。 「先日の足の再生なら、右足だけ再生して、左足は縫合し、体力の回復を待つ。体力が回復したら、縫合部分を開いて再生させる、といったことかな。縫合すると組織は癒着してしまうが、魔法で再生するときに問題はあるかい?」


 その問いに、ラウラもカミラも、自信を持って答えることができなかったが、カミラが自分の経験としてなんとか報告した。 「古い切断部位を再生させたことがありますが、そのときは問題なく指は再生しました。あとは、入れ墨は再生されませんでしたね。再生された部分は、体毛もなくいつもきれいです」


「陸軍病院からの引き継ぎ書には、『欠損した器官の再生には膨大な魔力を使うため、術者の魔力切れによる失神に注意』ともあるね。これも注目点の一つだ」 ハワード医師は資料を見ながら付け加えた。


 魔法の力を、医学の知識で細かく検証していく。それは、二つの世界が交わり、新しい治療法を生み出す、最初の一歩だった。


「魔法使いは、人体を使って実践に移ることが普通であるようだが、医学ではそうはいかない。まず動物で試行錯誤し、間違いがないと確信を得てから、初めて人体での治療にあたるのが常道だ。君たちにも、医学的なアプローチで、魔法と医学のハイブリッド治療を開発していくことに同意してもらえるか?」 ハワード医師は、ラウラとカミラに、そう問いかけた。


 二人は顔を見合わせ、少し話し合った後、返事をした。 「魔法はイメージを基に治療を行うので、その動物についてよく学び、基本的な体の構造や生理的な機能をイメージできるようになってから魔法を施すことになります。そのため、学習の時間を割く必要がありますが、待っていただけますか? 待っていただけるのなら、動物実験から始めることに異存はありません」


 正直なところ、カミラは聖魔法を馬鹿にされたような気がして、不満があった。しかし、ラウラが静かに語りかけた。 「医学の進歩のために、魔法が医学のレベルに降りていくことが必要な段階なんだよ、きっと」


 その言葉に、カミラは一応納得した。魔法という神秘的な力が、科学という堅実な道と交わることで、より多くの人々を救うことができるのかもしれない。 二人の魔法使いは、ハワード医師と共に、新しい治療法の扉を開こうとしていた。


 動物解剖学、動物組織学、動物生理学の教科書が、医学部や獣医学部から研究所へと運び込まれた。ラウラとカミラは、メモを取りながらそれらを読み漁った。難しい単語や言い回しについては、ハワード医師が丁寧に解説してくれた。


 その結果分かったのは、人体も動物の体も、基本的な構造は同じだということ。その動物を特徴づける特殊な器官も存在するが、それは何らかの器官が変形したものであることが多いようだった。 そして、人に比べて体が小さい動物は、組織も小さいため、より繊細な魔力制御が必要だということも理解した。


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