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新プロジェクト

 ラウラは、シュミット医師とハインリッヒ院長に、話を聞いてほしいと頼んだ。病院の幹部二人の前に立ち、彼女は意を決して口を開いた。 「シュミット先生と、共同研究をさせていただけないでしょうか」


「それは、どういうことだ?」 と、シュミット医師が眉をひそめて尋ねた。 「『治療魔法と一般医療の組み合わせによる外科治療の将来』というテーマを思いついたのです。魔法と医学を最も効果的に組み合わせれば、患者の社会復帰が早くなったり、後遺症が少なくなったりすると思うのです」


 ラウラの言葉に、シュミット医師は懐疑的な表情を浮かべた。 「君の魔法だけで十分なような気がするがな」


 その言葉に、ラウラは先日の出来事を思い出して反論した。 「先日、両足を再生した患者ですが、その後、大量の食事を摂ったことは覚えていらっしゃいますか。私の推論ですが、魔法による再生のために、健全な体を材料に使っていたからだと思うのです」


 彼女は一気に思いを吐き出した。 「大規模な再生を無計画に行うと、身体への負担がかなり大きいのではないかと。今回はたまたま健康な兵士だったので体力が持ちましたが、病人や高齢者の場合、魔法再生が適用できない患者もいると思うのです。その点を研究して、事故が起きないようにするのは、私たちの使命のように思いました」


 ラウラの言葉は、ただの思いつきではない、真剣な探求心に満ちていた。その真摯な眼差しに、シュミット医師とハインリッヒ院長は、次第に真剣な表情になっていった。


「ラウラ君の言うことにも一理あるな。無から有は生まれないのだから、再生した組織の材料が何かあったはずだ」 ハインリッヒ院長は、深く頷いた。


 しかし、シュミット医師はまだ納得していない。 「だが、共同研究の相手がなぜ私なんだい?」


 ラウラは、その問いにまっすぐに答えた。 「それは、私を最初に担当してくださった方だからです。それに、ちゃんと最後まで面倒を見てください、という気持ちも込めています」


 ハインリッヒ院長は、穏やかな口調で言った。 「この件はもう少し検討してから返事をするよ。共同研究者がシュミット君になるかどうかは、まだ分からんがな」


 シュミット医師は新人がテーマを思いついたからと言って「共同」研究なんて生意気なことを言うことに驚いていた。魔法と医学を混合した治療は確かにこの子にしか研究できないだろうが、逆にいえばこの子一人でも研究できてしまうテーマである。新人の研究につき合わされるのはシュミット医師のプライドが許さなかった。


 それからしばらくして、ラウラは陸軍から派遣される形で、軍も関わっている国の先端医学研究所へと異動になった。ここでは、魔法と医学を組み合わせたハイブリッド治療の研究を行うのだという。


 研究所に着くと、すでに当代の「聖女」として名高いカミラも、そこに呼ばれてきていた。二人は久しぶりの再会を喜び合った。


「カミラ、久しぶりね。魔法学校の卒業式以来だわ」 「そうね、ラウラ。でも、あなたの噂は聞いているわよ。両足を切断した兵士の足を生やしたってね。学園にいた時は、回復術がそんなに使えるという印象はなかったけど」


 カミラの言葉に、ラウラは少し照れたように答えた。 「カミラに教わって、医学の勉強をしたのよ。魔力はそこそこある方だったから、任官したばかりで、少し頑張りすぎたってところかしら」


 するとカミラは、不機嫌そうな顔で言った。 「あなたのおかげで、私でも脚の再生が出来るんじゃないかって、足のない人が訪ねてくるようになって大変なのよ」


 聖女として、人々の期待を一心に背負うカミラの苦労を、ラウラは初めて垣間見た気がした。二人の魔法使いは、それぞれの道を歩みながら、再び巡り合ったのだった。


 ラウラは、カミラの言葉に静かに耳を傾けた。そして、長年の胸の内を明かすように話し始めた。 「カミラ、覚えている? あなたが回復魔法の実践の授業の中で指を再生させたシーン。あれは本当に印象的だった。奇跡というのは、こういうことを言うのねって、私、感動したんだ」


 ラウラの瞳は、あの日の光景を鮮やかに思い出していた。 「それから、回復魔法には医学の知識、解剖学の知識が重要だということも、あなたの教えだったわ。私は、あなたの示した指針に従ってきた。でも、聖女にはなりたくなかったの」


 その言葉に、カミラは少し微笑んだ。 「私は、生まれた時から聖女になるのが目標だったの。そういう家庭で育ったしね」


 彼女の言葉は、迷いのない、まっすぐなものだった。 「医学の知識が回復魔法に重要だということも、うちの家族はみんな知っていたわ。私は聖女になるには少し魔力が不足していることはわかっていたけれども、魔力は訓練すれば少しは増えるから、そこに期待して魔法学校に入ったのよ」


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