表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/82

陸軍病院の魔法使い

 結局、ラウラは長兄フリードリヒの紹介で、陸軍病院に勤務することになった。ここなら好きな回復魔法を活かすことができるし、軍であれば攻撃魔法や防御魔法のニーズもあるかもしれないと考えたからだ。 病院側は回復魔法が使えること、そして魔法学校で培った医学の知識が買われ、医師の助手という立場で採用したのだった。制服も聖女のような白い服ではなく、軍服に近いもので、二等軍曹の階級章をつけた服を着ることになった。


 陸軍病院は、平時には軍人やその家族の病気を治療する場所だが、ひとたび戦争が始まれば、前線の野戦病院に派遣されることもあるという。ラウラの上司は、若き医官のシュミット。彼は外科を専門としていた。


「君は回復魔法が使えるんだって?」 と、シュミット医師は尋ねた。 「魔法学校では、結構使える方でした」 と、ラウラは正直に答えた。 「僕は魔法には懐疑的な立場ではあるんだけど、今度、見せてくれ」


(学校を出たての魔法使いのお手並み拝見だな)


「はい、わかりました」


 回復魔法を披露する機会は、すぐにやってきた。演習中に大怪我を負った兵士が運び込まれてきたのだ。両足が切断されており、出血がひどい。


「ラウラ、重症患者だ! 両足切断だ、止血と縫合を優先してくれ!」 シュミット医師の指示が飛んだ。だが、ラウラは、 「ドクター、両足の再生を試みます」 と答えると、失われた両足の再生を、回復魔法で始めた。


 まずは切断面の清浄化。 解剖学の教科書を思い出しながら、足の基盤となる骨の再生。これがないと筋肉の再生が出来ない。 次に血管と神経の再生。走行を意識して、体の再生力を最大限に引き出して魔力はそれの手助けをするの……。 くるぶしから下は関節が多くて複雑だから慎重に。魔力制御も繊細に。解剖学の教科書のイメージを再現する。あぁ、小さな筋肉が沢山あって大変、集中を切らしたら駄目……。


 およそ三十分もかかる大魔法だった。だが、両足を失った兵士は、自分の足で立ち、歩いて病室を出ていくことができた。再生したばかりの足は十分な筋力がなく、結果としてリハビリは必要だったが、車椅子を使わずに済んだのだ。


 ラウラは、いきなりの大魔法で疲労困憊し、施術を終えた後、意識を失ってしまった。


 シュミット医師は、意識を失ったラウラを見つめながら、 「回復魔法を見せろとは言ったが、こんな派手なものは見たくなかったな。学校出たての魔法使いが粋がって気を失って、情けないものだ」 と呟いた。


 ラウラが目を覚ましたのは、それから半日後のことだった。すぐに、命令違反だと怒られた。そのあとで、彼女の魔法自体は褒められたのだが、その言葉はどこか複雑な響きを帯びていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ