比翼の鳥
帝国騎士団は反乱国を次々と潰して遠征し、世界は恐怖に満ちていた。
「やっと森を抜けるぞ」
斥候の兵がボヤいた。しかし、そこに広がるのは。
「砂漠か、厄介だな。こっちは馬だ。甲冑も仇となろう。森で仕度し、あそこに見える小高い丘の村を見てくるか……」
小高い丘の村。いや、集落? ただの数軒の家。まあ、人がいるなら水はあるだろう。その前に、斥候は少し休む事にした。
騎士団本丸。団長【ヴォーゲン】。
「【サエル】(斥候)が、行って二日。どうしたものか。我々もそろそろこの森を出るか」
騎士達はキリッと立ち上がる。そんな中、一人、自由奔放に木の枝に登り、座ったままの者もいる。
騎士団の新しい斥候【ドウキ】と【シーゲル】は森を抜けた。砂漠へ来て、サエルの死体を見つける。馬もいない。
「なんと! あのサエル様が殺られるとは」
「戦ったって感じじゃないな。あそこの集落の者の仕業か?」
「とりあえず、一旦報告だ。戻ろう」
「待て! なんだ? この匂い」
どこからか、変な匂いがする。くんくんしてみると、どこからしているのかわからない。
「これは?」
シーゲルが見つけたのは森の木の葉。
「枯れているだけだろ?」
ドウキが言う通り、枯れている。しかし、普通じゃない。だからシーゲルは考える。
「そんなに気になるなら、一つ持ち帰り報告すればいい」
「ああ、そうだな。帰ろう」バッと、一掴み。シーゲルは葉をテイクアウト。
ドウキとシーゲルが本丸に戻った。
「……と、いうことなんです」
団長は考え。
「この森に、サエルを殺したモノがいるかも知れないな。匂いも気になる。が、この地は初めてなだけで、元々そういう地理なのかも知れん」
例えば、山岳地帯の温泉付近は硫黄臭いとか。
「皆、固まって動いた方が良いな」
号令係が叫び、ホラ貝を鳴らす。ブォオーン! と。
しばらくすると、斥候の二人が会わなかった女が一人でキョロキョロしていた。
「なんだ貴様!?」「おい、団長が言ってたサエル様を殺した暗殺者じゃないか?」など、歩兵がざわつく。
「あの、兵隊様、砂漠はどちらでしょうか?」女がオドオド聞く。
「貴様! 砂漠だと!? やはりサエル様を!」「待て! コイツ、血が服に付いてないぞ? ただの迷い人かも」「オレはそれよりこの女の顔が気に入ったぜ! へへ」など。
「何を騒いでいる!」ドウキだった。
「あの、兵隊様……」
「女、砂漠の者か? 砂漠は我々の進む先だが、そこで仲間を殺されている。お前は武器を持っていないようだが、どうしてここで迷っている?」
ごもっとも。
「私は……。砂漠から……」
「なんだと? お前、我々より早くここまで森を通ってきたと言うのか!?」
怒りんぼドウキ。
「えぇ、多分、兵隊様達よりは早いと自負しており……」
「もういい。喋るな女。お前は帝国の敵だ。死ね!」ザッ。
ドウキが馬を降りて剣を構える。そして、振り下ろす。
「……何をしている」
「待ってくだせぇ! この女はオレにくだせぇ!」さっきの兵士だ。グサッ!
「え!」
その兵士を女が、兵士の剣で刺した!
「あは! また一人! 私の前ではバカな男が丸腰だわ♪」
「貴様! やはりサエル様を殺した者か!」ドウキが構える! 兵士達も女を囲うように広がる!
「我が名は【シキヨク】! 砂漠より来た者。帝国よ! ここより先には行かさないわ!」
一方、兵隊のまだ森に入ってない辺りはー
「なんか腹減らね?」「オレはなんだか、眠くなってきたぞ……はぁあ~」と、欠伸するものまで。
そこに、旅の行商人がやって来た。
「帝国兵さん、何か要りますか?」
「金なんてねぇーよ」
「では、私を雇ってくださいませんか? ってのも、行商人は辛い! はっきり言ってどこかに属した方が儲かる! それなら帝国でしょ!!」
「お、おぉう……」行商人の圧に少し参る兵隊。だが、確かにその通りだ。どこかで何かやるなら帝国の反感を買わない方がいい。そして、商売は兵隊にはできないが必要なモノもある。単純に食糧など。
「でもなぁ、シーゲルさんなんつーかなぁ?」
「疑り深いんだよねあの人」
どうやらシーゲルは下っ端からは慕われていないらしい。
「では、私の秘技、【ブタノシヨウガヤキ】をお見せます! そのシーゲル様とやらを呼んでください!」
行商人は料理ができるらしい。
「料理しだしたで……」
「どうするよ? シーゲル様は料理なんて食べないだろ……」
「私がなんだと?」シーゲルだった。
「ハッ、す、すみません!」びしっと敬礼する兵たち。
「まあいい、それよりなんだこの美味そうな匂いは?」
シーゲルはくんくんするのが好きみたいだ。
「企業秘密です。仲間に入れてくれたら、教えてもいいですかね」
ー出来上がりー
「毒……。が、入ってるとか?」
疑うシーゲル。
「じゃあ私が味見も兼ねて、一切れ」
そういうと行商人はロース一枚食べた。兵士達の垂れるヨダレ……。
「シーゲル様、あっしも味見、いや、毒見しますよ!」「あ、ズルい! 俺も!」と、兵たちは戦いの事なんか忘れていた。
ズバズバズバっ!
一つの皿に集中している兵達を後ろから容赦なく斬った行商人!
「やはりな」
シーゲルは騙されなかった。
「兵隊さん、ダメでしょ、戦う者が隙を見せるなんて」
「何者だ。まあ、帝国に逆らう奴はここで死ぬがな」
と、シーゲルが言ってる途中から、行商人はシーゲルに包丁で斬り掛かった!
「ほう、シーゲルとやら、なかなかの腕だな。私のペースを掴むとは。我が名は【ショクヨク】、砂漠の民。そして……」
ショクヨクはなんと空へと舞い上がって……。
「ついてこれるかな?」
と、吐き。スーっと団長の方へ向かっていった! そこには、同じく空に居たシキヨクがいて、二人は融合し、新たな人物になった。その者は言う。
「お前らは、【ガソリン】って知ってるか?」
当然ガソリンなんてこの世界ではあり得ない。
「この森の木々が枯れているのはガソリンを吸ったため、つまりは」
と、いうと、マッチを取り出して火をつけ、森へ落とす。森は全焼!!
「くくく、帝国よ、私達比翼の鳥には敵では無かったな」
と、油断した瞬間、炎が集まる。木に登っていた兵、名を【ボンノウ】と言い。
裏タイトル、火翼の鳥!
炎を纏ったボンノウは空へと舞い上がる。
「な、なんだ!?」
そして、比翼の鳥という者に斬りかかる!
「秘技、焔斬撃!」
「はっ! ただの……」
比翼の鳥は兵士を殺した剣で受け止める! すると!
「な!」ボォオオオと、比翼の鳥が燃える!
「うがぁーーー!」比翼の鳥は逃げる! が!
ズボッ! それはヴォーゲンの矢だった! 矢としては太く、まるで、槍を飛ばしたような。そして、身体を貫き、穴が空いた!!
当然比翼の鳥は死んだ。
「帝国を舐めるな!」
結局、死んだのはサエルだけで、あとは救護班の活躍により無事だ。
「がそりん、とか言ってたな。なんのことだ?」
ヴォーゲンが問う。そりゃ誰もわかるはずがない。
「砂漠にはなにがあるかわからんな……。注意して行こう!」
「しかし、これで【悪の組織、比翼の鳥】の一人をまた討伐できたわけだ」
そう、帝国は何もやたらめったら殺し回っているのではない! 比翼の鳥という、謎に包まれ、未知の脅威から世界を救おうとしていたのだ。
真、タイトル
転生チートから世界を守る帝国の物語!