2. 転生していきなり畑仕事!?でもスイーツは正義
「あ、やば……死んだかも……」
それが、俺――いや、雄介の最期の記憶だった。
前世では、発展途上国で農業支援とかしてた青年。
熱中症にも負けず、現地のおばちゃんたちに味噌汁を振る舞いながら、「発酵ってすごいんだよ!」って熱弁してたタイプの人間だ。
でも、流行りの感染症には勝てなかった。
そして目を覚ましたら、なんと――
「ユース~!起きて~!今日も畑の収穫しにいくよーっ!」
「……誰?」
とても元気な、ポニーテールの幼女(失礼)に肩を揺さぶられていた。
彼女の名前はフィリア。
この辺境の村で一番の幼なじみ――らしい。
その姿は、明るい栗色の髪を肩にかかるセミロングで結んだポニーテール。
エメラルドグリーンの大きな瞳がキラキラ輝き、元気いっぱいだ。
……うん、転生したんだ、俺。
さて、ユースとして転生してから数ヶ月。少しずつ分かってきたことがある。
この『アウス村』は、のどかで平和そのもので、牛よりも人のほうがのんびりしている。
まるで時がゆっくり流れているかのようだ。
そして、この世界についても少しずつ理解が深まった。
『ラウディア王国』をはじめ、隣国に至るまで――この世界では魔法使いが非常に希少だ。
ひとつの村に魔法使いがひとりもいないなんてことも珍しくない。
――それなのに、俺とフィリアの二人は魔法が使える。
俺の属性は光。
傷を癒やしたり、病気を治したりする……らしい。
なんでそんなありがた属性を、辺境の平民の俺が持ってんの?神様の趣味か?
フィリアは火属性。
最初は小さな火しか出なかったけど、今では芋を焼くには十分な火力を出せるようになった。
俺のスイーツ作りに欠かせない、火力担当だ。
「ユース~!今日のおやつ、また作ってくれる?」
「もちろん。畑のサツマイモがいい感じに育ってるしな」
そう。この村に転生してから俺は、
前世の知識と光魔法で『おいしい&癒やしスイーツ』を作るのにハマっていた。
フィリアの火魔法もちょこっと使って、コンロ代わりにしてる。
「はい、焼き芋タルト、完成~」
「わーい!ユース、やっぱ天才だねっ!」
たった一切れで、フィリアはくるくる踊り出すし、
村の大人や他の子どもたちも目をキラキラさせて群がってくる。
……うん、なんか、こっちの世界、悪くないかも。
「ユース。わたし、お嫁さんになってもいいよ」
「え、早くない?」
8歳にしてプロポーズされるとは。
でもまあ、これは冗談半分で済んだ……と思っていた。
このときはまだ、
「甘いものが国を動かす時代」の始まりだなんて、知る由もなかった――。