第1話 初恋もまだなんです
現実の恋は、素敵な少女マンガのようには上手くはいかないよね。
そんなことは分かりきっているのに。
でも僕は、夢見てしまうんだ。
僕は永瀬和真。
えっと、そのぉ……、僕は今まで彼女が一人もいたことがないんだ。
告白もしたことがないし、なんなら初恋もまだなのです。
***
文房具メーカーに勤める僕は、いつでも真面目に仕事に励んでいた。
だって、それだけが僕の取り柄といえるから。
僕の主な趣味は読書です。
小説、マンガ、純文学やエッセイ……けっこうなんでも読む雑食系……、いいや読書界ではがつがつ肉食系?
気になる作品は、とりあえず一度は読んでみたくなる。
だって、どんな物語読むまで気になって仕方がないもの。
話題作から、埋もれた名作まで。
僕の読書欲は止まらない。
年々、勢いを増していく。
何度か本棚を買い足して、家財道具の持ち物は本がだんぜん多い。
買った愛読書たちは、なかなか捨てられない。
学生の頃から買い貯めていたお気に入りの雑誌もたっくさんあったのに、両親に「家が本で潰れる。いい加減にしてくださいな」と泣く泣く古本屋さんやオークションサイトに出品させられてしまった。
今は実家を出てアパートで一人暮らしをすることを計画中です。
ただ、安月給の一人暮らし、本棚をたくさん置くわけにはいかないだろうな。
僕は本の中でも現在は、姉と妹の影響で特に少女マンガと異世界恋愛アニメが大好きだ。
だが、高校生の時に陽キャな女子や友達男子に揶揄われたトラウマから周りには内緒にしている。
かなりコミュ障な僕は飲み会や合コンの誘いも断り続けています。
なぜって……、だって……、3次元の女性がちょっぴり怖くて苦手ですから。
そんな僕です。明後日、企画課の先輩である小鳥遊さんと二人で、文房具展覧会の地方イベントの出張に行くことになってしまい、あたふたしてます。
僕は女性と職務以外の話をしたことがなくって、緊張してテンパってしまうのは目に見えているんだ。