7、一校時目
あと少しで連休………!
「はい、ということで、今から授業を始めまーす。」
「はあ………はあ………なにがということで、かは分からないけど………まずはこの縄解かない?」
階段を上がりきった先にあった普通の教室くらいの部屋で、フィネアは元気ハツラツとした声を出す。
それとは対称的に、俺は未だ縄に縛られたまま、床に転がっており、その周辺の床は一面俺の体液で汚れていた。
うん、あの後フィネアに物凄くいじめられた。床に広がる体液はその時に出た汗やら涙やら鼻水やら………果てには発情していたこともあって、少量だが、そういう液も混じっている。
一応、フィネアはまだ気づいてないようだが、一瞬ヒヤッとしたこともあった。それは、フィネアが、あろうことか床に広がった俺の体液を回収しようとしたのだ。確かに、フィネアにとっては俺は薬品で突然変異した貴重な研究対象だが、それでも少女の体液を嬉々として集めるのは間違っていると思う。
ちなみに、前話では全く触れなかったが、俺はこの三年間で小学二年生くらいまで大きくなった。そして、その少女にイタズラ(意味深)するフィネアはどうかしてる。断言できる。だってこれ痴漢してるのと同じだもん。
「では早速、私達がいるこの地下について説明しよう!」
フィネアは俺の心情を知ってか知らずか、俺の懇願をスルーして『授業』を始めた。
「まずはここ、大規模転移室。文字通り大規模転移するための部屋なんだけど、なぜそれが必要なのか、はい、ネズ君!」
フィネアは手を挙げてないし挙げれない俺に向かってビシィッと指差す。正直何も答えないで拗ねてやろうかと思ったが、フィネアはそんなので諦める訳がないので、フィネアの問題を真面目に考察してみる。
まず、フィネアが言った大規模転移室には、確かにそれらしき魔法陣が描かれており、他には何も無い。家具はもちろん、窓、ドアすらない。階段からは直通で行けるし、今はフィネアが光魔法『照光』を使って照らしている。
と、ここまで考えて、ある一つの疑問が浮かんだ。それは………。
「出口が無い………?」
そう、出口が一切ないのだ。大規模転移室は先程も述べたように、ドア、つまり次の部屋への入り口がない。ということは………?
「出口はこの大規模転移室か………。」
「ピンポーン!そう!実は物理的な出口はないのである!」
俺が思わず呟くと、フィネアは嬉しそうに答えを言う。だが、それは俺にとっては答えではない。俺が欲しい答えは、なぜ出口が魔法しかないのか、だ。
そんな俺の不満が伝わったのか、フィネアは俺の疑問を分かってたように答える。
「えーと………言いづらいんだけど………ここ、木の中なんだ。だから、出口を作ってもすぐ再生されちゃう。」
「………………え?で、でも、壁とか床とか天井とかは石だろ?」
「それが………ただ石みたいに見えるだけで、実際はくり抜きすぎて枯れちゃった枝なの。」
ということは………?俺たちは今、でっかい木の中にいて、そこで三年間暮らしていたと。
「………………異世界ハンパねぇ。」
「うん、これは私も同意だな。だって、この木って全長5kmあるくらいあるんだもん。」
「………は?」
え、全長5kmって、富士山よりも高いのか!?どうなってんだ異世界………。
「しかも、そんな長さがあるのに、地上に出てるのは根っこだけだからね。」
「ん?ちょっと待て。葉じゃなくて根が出てるのか?」
「うん?………ああ、まだ言ってなかったね。実はね、この木、上下逆さまなの。」
「………?」
上下逆さまとはどういうことだ?いや、もしかして………。
フィネアは俺の突拍子もない考えを見透かしたように、頭を縦に振る。
「うん、君が考えた通りだよ。この木は文字通り上下逆さまになってる。つまり、根は空中を這い、枝は地中に広がって、葉は星の魔力を受けて成長する。この木の正式名称は『逆大樹』。『世界樹』の双子だった木だよ。」