5、獣人
魔女サイドです。
「………で、落ち着いた?」
「あ、えっと………はい。」
私の問いかけに少女は若干戸惑いながらもちゃんと返事する。これで意志疎通は可能っと。
あの少女の叫びの後、私はよく分からないことを言っている少女をとりあえず大人しくさせるため、昔から練習してレベルが7になったスキル『首トン』を使用して少女を気絶させた。
その時に改めて少女を見ると、かなりの美幼女であることが分かった。もちろん、私はロリコンではないが、それでもクラッと来るものがあった。
その少女の見た目は、3、4歳くらいのアルビノ幼女で、白い髪に紅い瞳、ネズミ特有の少し大きい耳とピンク色の細長い尻尾が生えている。
こうして見るとやっぱ可愛いね………。ってそうじゃなくてまずは服を着せないと!
それで、少女に合う服は持っていなかったので、仕方なく毛布を掛ける。すると、丁度良く少女が起きて今にいたる。
「で、君はどこから入ってきたの?ここは地下だからそう簡単には入れないはずだけど?」
私は少し強く質問する。私が言った通り、ここは地下なので、侵入するには入り口から入るしかない。それだったら侵入された時点で流石に私も気付く。しかも、防犯用の魔法をかけているので、私が気付かなくても追い返せるはず………………なのだが、現に少女はここにいる。
私は侵入者の侵入方法と目的を聞き出すため、スキル『威圧』を発動させながら返答を待つ。しかし、それがいけなかった。
「いや………あの、えと………うぅ………。」
私に睨まれた少女は明らかに挙動不審になり、ついには頭を抱えてうずくまってしまった。
「え、ちょ、ええ………?」
私そんなに怖い顔だっけ………。いや、少なくとも同級生にはモテるからそれはないはず………。って、そっちじゃなくて『威圧』のせいだろうけどね。
私は少し確認しようと、少女にスキル『鑑定』を使う。その途端、少女の体がブルリと震えた。『鑑定』は相手の情報を無理矢理開示させるため、相手に一定の不快感を与えてしまう。まあ、そんなことは置いといて、早速『窓』を見てみる。
すると、予想内と予想外のことが分かった。
まず、予想内は、この少女が称号『小心者』を持っていたことだ。『小心者』は逃げ足が速くなったり回避が上手くなったりするが、格上にはめっぽう弱くなるという効果がある。この称号のせいで少女は震えているのだろう。断じて私の顔が怖かった訳ではない。ないったらない。
次に、予想外は、少女のステータスがないことだ。いや、スキルや称号は表示されているため、完全にない訳ではない。そして、この表示をされるのは、勇者しかいない。つまり、この少女は勇者………?
いや、ないね。勇者にしては幼すぎるし、そもそも『小心者』を持っている。勇者は勇ましいから勇者なのであり、決して小心者ではない。ちなみに、勇者は異世界から召喚するのがセオリーで、ステータスがないのは、ステータスはこの世界における指標のようなもので、異世界から来た勇者にはこの指標は適応されないから、らしい。スキルや称号は体に付随するので、ウィンドウに表示される、という訳だ。
でも、その理屈だと、この少女は異世界の子、ということになる。しかし、この世界と繋がっている異世界は『チキュウ』しかなく、こんなネズミッ娘は存在しないはず………。
私が推測に推測を重ねて唸っている間に、少女はかけられた毛布にくるまってうとうとし始めた。
そんな様子を見て、私は少女の正体を暴こうとしているのが馬鹿らしくなり、思わず微笑む。そして、私は敵ではないことを示すために、少女の頭を優しく撫でる。すると、少女は安心したように寝息を立て始めた。
「何この可愛い生物………。」