3、魔女の研究
ほんっとに時間がありません。まあ、休みの日に書けよって話ですけど。
「チュー、チュチュ?チュー。」
「チュッチュチュ。チューーチュチュ!」
「チュイチュイチュー。」
今、俺はホワイト・マウスに囲まれてる。なぜかって?俺もネズミだからだよーーー!!
「チュイチュチュチューーー!(なんでだよーーー!)」
「チュイ?」
「チュチュ。」
「チュエー。」
俺の無情の叫びに何体かのネズミが反応した。しかし、俺にあまり興味がないのか、ケージ内にあるハムスター用の遊具で遊び始める。
そう、ここはケージの中だ。だが、ペットを入れる小さなヤツではなく、三畳くらいの大きさだ。
そんな広さを持つケージの中には、先程のハムスター用の遊具や、餌が無造作に置かれた銀の皿、竹を縦に割ったような形をしている水の入った陶器がある。
俺の同胞達は主に遊具に集まっていて、それも何十匹も群がっているため、遠目から見たら白い山ができてるように見える。
ん?そんなことより、あの後どうなったかって?
あの後、鷲掴みにされた俺が光に耐えて顔を上げると、魔女のとんがり帽子を被った金髪碧眼の女性が見えた。おそらく、俺を鷲掴みにしたのはその女性だろう。
その女性は俺を丁寧に目隠ししながら移動し、このケージへ降ろした。しかも、そのケージの壁はどこまでも丁寧に布がかけられており、分かるのは白い天井だけだ。お陰でここがどこかも分からない。ま、分かったところで逃げれないけどな!
そして、あの女性は定期的に現れ、我が同胞を連れていっては数分後にケージに戻すのを繰り返しているのだが、もちろん何もしていない訳がない。
俺の目の前にいる同胞はなぜか少しずつ大きくなっている。最後に見たときには、元の大きさの二倍になっていた。
それ以外にも、背中に鶏の冠が生えたヤツもいるし、なんならほぼウサギになってるヤツもいる。
つまるところ、あの女性は俺の想像通りの魔女で、俺達で生体実験をしているのだ。何を実験しているのかはまだよく分からないが、戻ってきた同胞のほとんどには何かしら人間の部位が生えているため、ネズミを人間にする実験っぽい。
で、俺の状況を説明すると、魔女の実験対象であるホワイト・マウスに転生し、人造人間ならぬネズミ人間にされそうになっていると。
うん、詰んでるね。この上なく詰んでるね。俺は某妖怪アニメのネズミ人間にはなりたくないぞ!
だが、突破口がない訳ではなく、魔女は遊具で遊んでいるネズミを積極的に狙っている。ならば、もう遊具には近づかず、水飲み場の容器の後ろに隠れれば、俺が狙われる可能性はぐんと低くなるはずだ。
早速実行し、容器の影に素早く隠れた。
よし、これで変な実験をされることはない………と思ったんだけどなぁ〜〜!
身を小さくして隠れた後、俺は魔女の手の上にいた。なぜなら、魔女は、隠れていたはずの俺をまるで最初から分かってたようにピンポイントで捕まえたのだ。それも、俺に気づかれないように後ろからゆっくりと。
なぜだ………………反対側からなら俺は丸見えだから捕まるのは分かるが、見えないはず方向から一瞬で捕まえるとかマジもんの魔女かよ………。
捕まえられた直後は俺はもう全力で暴れたが、そもそも逃げる場所がないことに気づいてからは大人しくした。動きを封じるために麻痺薬とか打ち込まれたら嫌だしな………。
で、魔女はまた鼻歌を歌いながら、またまた俺に目隠しをして移動した。正直言って、魔女は鼻歌が下手だ。歌っている歌さえ知らない俺がそう断言できるから、逆に才能があるかも知れない。歌が必ず下手になるという才能が。
と、俺が考え事をしてるうちに目的地に着いていたらしく、そっと地面に降ろされて目隠しが外された。
まず最初に見えたのは、白い壁だった。
どこを見ても白い壁、壁、床。どうやら、普通のサイズのケージに入れられたらしい。
上を見ると、あの魔女が微笑んで俺を見ていた。それも、俺が知らない形だが、明らかに注射器を持って。
ひえっ………その笑顔で知らない注射器を見せられたら、超絶怖いんですけど………。
注射器は針がなく、普通の注射器より短く太いので少し可愛らしい形状になっているが、怖いもんは怖い。ケージを走り回って注射器から逃れようとしたが、簡単に手で押さえつけられた。
ぐえっ………くっ殺せ!あ、待ってホントに打たないで!
魔女はゆっくりと注射器を俺の背中につけ、一気に薬品を押し出した。
「チュチュチュ、チューチュチュ!………………チュ?(お願い、ホントに待って!………………え?)」
最後の抵抗も空しく薬品を打ち込まれた。しかし、ブシュッと音がしただけで、痛みが全然やってこない。
恐る恐る後ろを見てみると、注射器はすでに俺の背中から離れていて、中は空っぽになっていた。
音がした時に打ち込まれたはずだが、音以外になにも無かった。あまりよく分からず、首を傾げていると、魔女が得意げに話した。
「いやー我ながら良いね、この圧縮型無痛注射器。ネズミが暴れないからやりやすいよ。ま、このネズミは最後まで暴れてたけど。………んーやっぱおかしいよねぇ。『白痴小鼠』は知能が低くて、これがなんなのかわからないから暴れないはずなんだけどなぁ。ま、いっか。」
魔女は注射器の説明と、俺が明らかにおかしいことを全て話してくれた。歌下手の他に天然の属性が増えたな。
とりあえず、俺は確実に薬品を打ち込まれたらしい。だが、一分ほど経ってもなんの変化も無かった。
「んー効果無しかー。ま、個体差があるし、仕方ないか。じゃ、君はこれ着けてケージ部屋に直行ね。」
魔女はそう言って俺の胴に赤いリボンを巻き付けると、行きと同じように俺を運んで元の部屋に戻した。
これが、俺が魔女に確保されて体験した出来事だ。赤いリボンはもう外してる。だってあれくすぐったいんだもん!
胴から外した赤いリボンをもみくちゃにしてると、俺が今日最後の実験体だったらしく、俺が部屋に降ろされてしばらくすると、部屋の明かりが消えた。
今日ももう終わりらしい。俺はホッと安堵しつつ、意外に体力を消費して疲れていた体を休める。そして、そのまま眠気に従って意識を手放した。




