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1、拾われた日
そこはただ暗かった。
光は当然無く、それどころか自分の体さえも無い。
本当に真っ暗で自分の意識しか無い空間。
その空間は果てなき闇を見ているようで恐怖を齎し、暖かいもので抱擁されているように安心できる。
そんな矛盾した暗黒の世界は突然、光に呑まれた。
そのあまりの明るさにたじろいていると、耳元で声が聞こえた。
『ふんふん、これは珍しい魂だね。冥界に堕ちても完全な形を保ってる。それに記憶まで破損無しときた。これはボクの世界に連れてくしかないね。いやぁ、冥界の巡回をサボらなくて良かった。じゃあ、この魂はここをこうして………』
その声は中性的に聞こえ、口調もどちらともとれる曖昧さを含んでおり、声の主は体が無いはずの俺の首根っこを掴んだ。
『よし、あとは連れてくだけだね。………ああそうだ、今、意識あるかどうかわからないけど、一応言っとくよ。ようこそ、ボクの世界へ。ボクは君を歓迎するよ。』
その声を皮切りに、俺の意識は暗闇へ落ちていった。