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第4話 ダンジョンボス

ダンジョンは大きな枠組みで分けると10階層ごとに分けることができる。


そして10の倍数の階層には入り組んだ迷路のような地形は存在せず、ただ一つの巨大なフロアにボスモンスターと呼ばれる強大な敵が待ち構えているのだ。


このモンスターを倒さなければ次の10階層は解放されず、下層に潜るためにもボスモンスターの討伐は必須となっている。


だがそれはあくまで一番最初の初討伐の話であって、一度倒してしまえば下の階層に取り付けられた転移門を使用する事でいつでも無視することが可能。

けれど10階層ごとに難易度が大幅に上昇することから、次の10階層に挑むためにはボスモンスターの討伐証明として回収した素材を要求されるのだ。


そのため冒険者たちにとって10の倍数の階層のボスモンスターを倒さなければ次に進むことはできない。


次の階層に進めずに地団駄を踏んで引退する冒険者も多い中、ミナトの所属していたパーティはボスモンスター相手に撤退を余儀なくされ、戦力を増やさなければ次の階層に進むことができないとして「直接的な戦闘力を持たないスキル」である彼を追放した。


「お前にとっては分からないだろうが、俺にとっては因縁の相手なんだよ」


牛の顔面、筋骨隆々な人間の身体。


これを冒険者たちは人身牛頭、ミノタウロスと呼ぶ。


「10階層より下に行くために…………なんて言い訳を取り繕ったところで、結局は俺がどこまで成長できたか知りたいだけなんだよ」


巨大な斧を引きずって前に出るミノタウロスを相手に剣を引き抜き、顔の側面に並行になるよう霞の構えで殺気を込める。


「俺はお前に蹴落とされるヤツだったかを確かめたいんだ」



通常の冒険者は5人で一つのパーティを組んで戦闘に当たることが多い。

冒険者協会としてパーティメンバーに制限などは設けていないが、ダンジョン内のスペースやメンバー同士の連携を考慮していくと結局のところ5人か6人で絞られてしまうのだ。


だったら連携も、味方の武器の距離や内部の空間を意識しなくていい少人数で攻略した方が便利なのではないか?

その方が報酬の分配も多く取れる、そう思った初心者冒険者が多くいるのは確かだが、少人数ではボスモンスターに勝てない、不測の事態に対応することができない為、必然的に人数が決まってしまうのだ。


だからたった一人でボスモンスターと対峙すること自体が、冒険者協会は考慮していないのである。


「……その速度でいいのか?」


斧を振り上げたミノタウロスだったが、ポツリと溢したミナトの声に反応して挙動が一瞬止まる。

するとその瞬間、振り上げていたはずの腕が宙を舞い、斧が地面に突き刺さると同時に血飛沫を振り払うミナトの姿が背後にあった。


「その程度の速さで、俺は見捨てられたのか」


生物が本能的に感じる恐怖に、ミノタウロスは自身よりも数倍小さいはずの人間に恐れ慄き後退する。


掴んだまま斬り飛ばされた斧から腕を振り払い、残った片腕で矮小な人間へと圧倒的な速度を持って降りかかるが、


魔力によって強化した肉体で、しかも片腕一本によってその攻撃は防がれる。


尋常ではない衝撃音と、ミナトの足元が完全に砕けて粉砕されている事から破壊力だけなら人間一人など最も容易く消し飛ばしてしまうであろう攻撃力。


「武器の性能があってこそだな。今までの剣なら破壊されて吹っ飛ばされていたところだ」


剣に力を込めると鍔迫り合い状態だった斧を弾き飛ばし、よろけるミノタウロスへと間合い詰めると剣ではなく足で顔面を蹴り飛ばす。


通常の人間では生み出せないエネルギーによって壁に叩きつけられたミノタウロスに追撃することなく着地すると、煙のような形で魔力が放出されているブーツへと視線を落とし、足を数度持ち上げて性能を確かめた。


「筋力の上昇ではない……身体能力の補助だな。あくまで手助けするだけだが、それでも巨体を吹っ飛ばす程度の威力まで引き上げてくれるか」


斧を持ち上げて再び襲いかかってくるミノタウロスへと視線を戻して、斬りかかる敵に剣を添えて軌道をズラす。

そして地面つ突き刺さる斧を踏みつけて跳躍すると、太い首を掴んで地面へと叩きつける。

後頭部を直接叩きつけられて口から液体を吐き出すミノタウロスの頭部に剣を突き刺し、


「フレイム」


剣を伝達して放出させる魔法技術、魔法剣によって内部からミノタウロスを完全破壊させた。


ミノタウロスの死体から降りると爆発によって飛び散る肉片のうち、討伐証明に使えそうなミノタウロスのツノを掴み取って転移門へと足を向けた。



転移門を使用して久方ぶりの地上へと帰還したミナトはソロでダンジョンから出てきた事に周りの冒険者たちから奇怪な目を向けられつつも、近場の協会でミノタウロス討伐証明を行って次の階層へと進もうかと思いながら足を動かしていたが、背後から付けられている気配を感じて足を止めた。


「偶然一緒だと、そう思いたいのは俺だけか?」


冒険者は武器の携帯を認められている。

ただそれを引き抜くこと自体はもはやグレーゾーンであり、死傷者がでなければ見逃すと言ったレベルの話だ。


だから冒険者と、存在を公にできない暗殺者の類が街中で殺し合っても法律上、事件化されなければなんの問題もない。


コートの中から刀剣に手を置き、後を付けている人物へと「妙な動きをすれば即座に切り落とす」と威嚇を行う。


するとごく普通の冒険者の装いをした男性が建物の角から両手を上げて降参のポーズをとって姿を表す。


「俺は降参。めっちゃ自信あった尾行がバレてんじゃぁ無理っしょ」


明らかに降参を示す男性に所属と名前、冒険者なら証明証を奪取して燃やしてやろうかと彼から目を離さないように身体を向ける。


「でも、パイセンは無理っぽい」


男の両腕が降ろされると、今の今まで感じることのなかった殺気が背後から放たれ、それに反応して剣を引き抜いて防御の構えを取り、剣にかかる強烈な、ミノタウロスの倍以上ある破壊力を持った一撃によって持ち堪えていたはずの足と地面ごと吹き飛ばされる。


「誰だッ!」


空中で身体を捻り、地面を剣を突き立てて体勢を整えて着地。

攻撃の行われた場所へすぐさま顔を上げると、


「流石だな。今の一撃を無傷で凌ぐとは、俺のギルドにもそうそういない」


「尾行に気付いたのもやべーって思ってたけどさ、アイツ本当に三等級冒険者なの? 協会だと戦闘力のないカスって言われ……」


「人をスキルだけで測るからこうなるのだ。男に必要なのは男気と根性、あとは筋肉くらいだ」


ミノタウロスに匹敵するほどの筋肉量を誇る肉体を惜しげなく見せびらかす上半身裸の大男は力強く握った両拳を正面に構え、完全に戦闘体制へと入ったミナトへと向ける。


(今の一撃はあの肉ダルマの物だ。剣で防御したから直撃とはいかなかったが、もしも直撃すれば)


右手で掴んでいる刀剣に、空いた左手をコート内に忍ばせていたナイフを掴んでの二刀流を構えた。


「関係ない。俺は俺のできる全てを全うするだけだ」


今の一撃でわかる、確実に今のミナトよりも圧倒的な格上。


だが最強になるのなら避けては通れない道だ。


「お前を超えて、俺は先に進む」


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やる気や更新速度に直結するのでしていただけると幸いです

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