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第13話 止まらない進化

いろんな方から感想を頂けてありがとうございます。

気になったことなど、本当に気軽に感想は使って欲しいのでしていただけると励みになります


真正面に対峙するオーガに対して身体を前方姿勢にして片足を引く。


今にも走り抜けそうな抜刀の構えに入ったまま、剣の柄を握らずに空に触れるミナトの右手が震えていた。


「ヴゥウウガァアアアア!」


コートの裾をはためかせ、剣を抜かずに目を閉じて動かないミナトに痺れを切らしたのかオーガたちは一斉に武器を持った腕を振り上げて迫り来る。


彼らにしても剣があるのにそれを使おうとせず、あろうことが敵前で目を閉じるなどと言う愚行を犯した愚か者を嘲笑いながら殺してやろうと、武器の射程距離に入ったその時、一斉に振り下ろして彼の頭部を潰すはずだったが、


(音が、聞こえる。今までよりもはっきりと)


ザッっと小さな地面をおするような音が鳴った瞬間、土埃を残してオーガの目の前に今の今まで動かなかった少年の姿は消滅、


そして抜刀を終え、刀身を剥き出しにしたままオーガたちの背後に立っていた彼の剣には少しばかりの血が付着していた。


自身の目の前から一瞬にして消え去った人間が、自身の背後にいると認識したオーガが身体を捻ってミナトへと武器を振り回そうとするが、遅れて先程の血液の在り方が姿を現した。


武器を持っていた方の腕が切断されており、切断された腕自体が武器を手放していないところを見るに、おそらく切られた自覚すらないまま、攻撃を許してしまったのだ。


「ガァアアアアアアア!」


失った腕は戻らない。

それをモンスターの直感で理解させられたオーガは、残った方の腕で掴みかかろうと手を伸ばすが、


ミナトの腕がブレた瞬間、輪切りにされてダンジョン内を吹き飛んだ。


「やっぱりそうだ。今まで鍛えられていなかった場所を鍛えて基礎能力が上がった」


2匹のオーガが襲いかかる光景に息一つ乱さずに腕を切断。

そのまま地面を蹴り上げるとオーガの顔面を天高く蹴り上げ、空中にいる隙をついて横から殴りかかって来るもう一体の攻撃を逸らした上で、相手の力を利用して回転。


遠心力を含んだ蹴りを頚椎へ目掛けて放ち、首の骨が折れたことを確認するや否、地面に両腕をついてから曲芸染みた動きで足払い。


体勢を崩して倒れ込むオーガを下から雑草を刈るかのような動きで首を跳ね飛ばした。


「……そして体幹が鍛えられて無茶な動きが効くようになった」


冒険者にとってできる動きが増える事は手数の多さに直結する。


モンスターと戦闘を行う職業である以上、不足の事態や予期していない体勢からでも攻撃をしなければならない状況に陥ることもあるが、その時に普段から想定していない動きをして身体を痛めれば元も子もない。


彼らにとって戦闘は仕事であり、モンスターの素材を剥ぎ取って生計を立てるものだが、根底にあるものは食い繋ぐための手段であって命を捨てて今後の生活に支障が出るようでは二流以下。


刀剣に付着した血を拭き取ってから納刀したミナトは、普段よりも落ち着いた息遣いでダンジョンを出ていった。



ギルドからの任務として取ってきた素材はギルドの方で回収して金銭へとなるが、個人の範囲で狩ってきたモンスターもギルド側で取引を行なっている。


ギルド所属ではなく冒険者は直接取引を行なっている業者に当たるか、もしくは協会の方で売っぱらう事ができるが、ギルド自体が市場を操作しているため高値で取引されるためお得なのだ。


具体的には協会は市場取引価格を参照した金額をそのまま持ってくるので値段がほぼ一定。

業者に持っていく場合は向こう側の取り分があるため、はずは向こうの利益を鑑みた上で冒険者に支払われるので中抜きが行われる。


ただし相当なものでない限り買い取ってもらえる事、そして協会側よりも高値で取引される事が多々あるためにその辺は忖度。


一昔前なら協会に直接持ち込んで金銭を受け取っていたミナトだが、今はギルドに売りつけようとギルドの素材取引所へと足を向けていた彼は、ギルドの任務を主に引き受ける2軍の冒険者たちの姿を目にする。


1軍、もしくはファーストと呼ばれる冒険者はギルド内でもごく僅かで、彼らの仕事は新たな階層を攻略することと、ボスモンスターの討伐。


言うなればギルドの抱える精鋭の殺戮部隊。と称しても過言ではない。


そのためギルドの運営を主に支えているのは2軍の冒険者たちであり、ミナトの使用している訓練施設なども彼らの働きによるものが大きい。


(思ったよりも良い武器を使っているんだな)


文字列として認識はしていたものの、前回の任務がアナスタシアと2人だったことや、ミナトが特例措置として階段飛ばしでファーストに上がってきたことから彼らとの直接的な面識はない。


ギルド内の工房から直接買ったであろう質の良い装備を身に纏い、5人パーティで固まって任務の報告を行なっている彼らの後ろに並んでオーガを売り払おうとするミナトだが、


否が応でも目立ってしまう。


基本的に冒険者の装備と言うものは量産品。

ギルドで販売されている質の良い装備でさえも基本構造と素材は同質のもので、違いは細かい装飾や色などの細々としたものだけ。


価格と機能性を求めた結果見た目がほぼ同じになるのはどこの企業もやっている事。

一昔前ならデザインセンスで差別化を図る形で商売を展開して行ったのだろうが、残念ながら動きやすさを追従するためどこもかしこも似たようなものになり、ニーズがそちらを求めているのだから仕方がない。


そのためミナトの黒コートのような装備は市販されておらず、彼の刀剣も冒険者のそれとは根本から造りが異なっている。


今の彼を例えるなら転校生が前の学校の制服を着てクラスにいるようなものだ。


どうせならフードも付いていれば顔を隠せたのではないか? と周りからの視線を遮りたいがフードなんか付いていたら視界が狭まる。


ファーストの連中がどいつもこいつも自分で取ってきたモンスターの素材を放り投げてオーダーメイドの装備を作るから、こう言った特異な装備はファーストの象徴などと言われて注目されるのだ。


防御力などを考えれば市販で足りるわけもないが、その辺は自重してほしいと重き悩んでため息を吐きそうになると、


「久しぶりだなミナト。あれなんだが、ちょっとお前に話がある。ついて来い」


後ろから片手に手を置く恭一郎に背後を取られたことの動揺を隠し切ってから、彼に視線をズラすが、


「姐さんの話だ。割と真面目なヤツだから断るんじゃねぇぞ」


今までの彼からは想像できない真剣な顔に、黙って頷くことしかできなかった。


面白い、続きが気になると思った方は是非ブックマークや評価をよろしくお願いします

作者のやる気や更新速度に直接関わってくるのでしていただけると幸いです


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