第4話
僕たちが向かっているオカ研は、教室や食堂がある本館とは少し離れた別館にある。
そのため、キャンパス内を少し歩くことになる。
「へえ、あんなとこに別館があったんだな」
「私は知ってたよ。ボランティアサークルとかもあそこにあるし」
「え、岩田さんボランティアとか参加すんの?」
と言った瞬間わき腹を小突かれた。別に悪気があって言ったわけじゃないのに…
そして本館と別館の真ん中まで来たというところで
「神谷~~~!」
と、遠くから大声で呼ばれていることに気づく。
その声のほうを見ると、ガタイの良い男がこっちに向かって走ってくる。
男が僕たち三人の前まで来ると
「橋本に岩田まで、三人でどこに行くんだよ」
この大男の名前は『嶋野 京平』バイト先が同じの友人だ。
嶋野はそのガタイの良さを活かし、ソフトボール部でかなり活躍しているらしい。
こんな男がなぜ僕のような陰キャと仲が良いのか。それは、趣味嗜好が共通しているからだ。
バイト先で僕が好きだったアニメの映画化が決まった時、歓喜しているところを見られ、そこから意気投合し、今に至るというわけである。
スポーツのできるオタクって本当にいるんだな…
「そういえば聞いたか!松本が死んだんだってよ!」
「え、嶋野って松本さん知ってんの?」
「いや同じソフト部だぜ?知ってるに決まってんだろ。てかお前らも知ってんの?」
(そうだったのか…全然知らなかった…)
そして僕は嶋野に、松本さんとの関係性、事件の内容、僕たちがこれから何をしようとしてるかを説明した。
「俺も付いてく」
食い気味に仲間入り宣言された。
「まぁ別にいいけど…」
「お、嶋野も行くの?ちょうどよかった!このパーティーにも戦士が欲しかったところなんだよ」
「いやドラクエかよ!」
珍しく僕が大きめなツッコミをした。
「あ、じゃあ私は何の職業になるの?」
「三兎はボランティアとかしてるから僧侶かな。自分は弓道部だし魔法戦士でしょ。で、晃太朗は帰宅部だから旅芸人」
「おいコラ」
しかもドラクエだとなかなかバランスが良いパーティーなのだから余計腹が立つ。
「で、今から別館のオカ研ってとこに行くんだな?」
「ああ、もしかたらオカ研のサークル長なら何か知ってると思って」
「え、神谷君その人知ってるの?」
「なかなかの変わり者だから気を付けたほうがいいぞ」
「晃太朗に言われたくはないだろうな」
「うるせ」
といった会話をしていると、オカ研の教室の前に着いた。
オカ研は別館の最上階である3階の一番端に位置し、手書きで「オカルト研究サークル」と書かれた紙が教室の札の上に貼ってある。中の電気は消えており、人のいる気配がない。
「おい神谷、誰もいないんじゃねぇか?」
「これはまた出直したほうがいいかもね」
とここに来たことがない者は皆そう思うであろう。しかし、オカ研はこれが通常運転なのである。
僕が皆の言葉を無視してドアをノックすると
「どうぞ…」
と小さく女性の声が聞こえた。
声を確認した僕は、ドアをガララと開け、ほか三人のパーティーを連れて中に入っていった。