「クチヅケホリック〜マスカレードの少女たち〜」編 part2
「…………美味しい……!」
「そうだろう?」
「ふふふ、ありがとうございます」
「うさぎが作るうさぎ肉の照り焼きは絶品ですから」
私は、二階の居住スペースにあるダイニングで晩ごはんをご馳走になっていた。
「腹が空いては戦はできぬ。特訓の前に腹ごしらえだ。それに、君には恩もあるからな」
インスタントばかり食べている私にとっては思わぬご馳走だ。ありがたくいただこう。
……と、今のうちに聞いておきたいことが。
「……そういえば、先輩はいつからあの力を使えるようになったんですか?」
「……一年前くらい、だったか。その日もいつも通り練習をしていた。目を閉じて、気を集中させた時だった。次に目を開けた時、持っていた竹刀があのような形に変わっていたんだ。人には、秘められた力がある……と、私は信じている。こういうこともあるだろう。私はあまり気にせず、鍛練を積み重ねた……。今日が初めての実戦だったけどな」
初戦であの強さを発揮できたのか……。先輩は昔から強かったけど、自力であそこまで自分の魔力をコントロールできるなんて。
「……それで、一つ相談なのだが」
「なんですか?」
「あの騒がしいのはどうにかならないのか? 毎度毎度『なんとかだど』と鳴って……集中力がそがれる」
「あー……。……それは、ちょっとどうにもならないと思います。あれは空気に触れた魔力が空気を振動させて鳴っているものなので。魔法を使う限り、鳴らないようにするのは……」
「……そうか、ならば仕方ない。集中が途切れないように精進するしかないか」
「ですね」
話を聞く限り、先輩の魔法はあの魔法具「イースト・デ・クラウド」を介した火や風、雷の魔法を使うことに特化しているようだ。魔法書「リーダー・デ・ヨンダー」による変身や魔法具「カタリ・デ・シオリー」を併用した強化変身を得意とする私とは、魔法のタイプが違うらしい。つまり現状の先輩は「魔法使い」ではあれど「魔法書羽女」にはなれない……ということか。




