第5話 勘違いからの新たな出会い。
~健斗に羨ましがられた(?)その翌日~
相変わらず、インドは暑い。放課後の教室も何故かクーラーが効いていなかった。クーラーの電源を切った人を恨む。
そんな中自分の教室で1人、生徒会の企画資料を整理しているといきなり声をかけられた。
「柳原先輩!」
最初はクラスの人かと思ったが、先輩と呼んできた時点で違う。なら水原さんかと思って後ろを振り向くと、それもまた違った。話したことのない人だった。
「はい。あの、失礼ですがどなたですかね・・・?」
「中1の学級委員の吉岡です。今まで確かに話したこと無かったですね・・・。いきなり失礼しました!」
「あ、いえいえ。こちらこそいきなり失礼なことをしました。それで、どうしました?」
「あの、菜々ちゃんのこと好きってホントですか?!」
「は・・・。いや、なんでそんな話が?」
「だって、塾でLINEを交換して以来この3日間、ずっと菜々ちゃんとLINEしてるらしいじゃないですか!菜々ちゃん、驚いてましたよ。こんなに色々話してくる先輩初めてだって。だからもしや気があるんじゃないかって!」
「いや、その気は全くない。なんかね・・・、水原さんとは何故か会話が途切れないんだよね。面白いし。それだけよ。」
「なんだー。つまんないですねー。」
「その敬語なんだかタメ口なんだか分からん話し方なんだよ・・・。」
「じゃあタメ口で。でももし柳原先輩が菜々ちゃんのこと好きなら2人ともいじれたのにー。面白くないなー。」
「はいはい、期待に添えずごめんな。」
「ホントですよ!」
水原さんと違ってすごく積極的に、そしてノリよく話しかけてくる人だ。
「・・・。そんな他人の恋愛に興味ある吉岡さんは好きな人いるの?」
「別に春奈でいいよ。と、というか!いる訳ないでしょ!」
否定してる割に顔が真っ赤だった。これはもう、いると言っているのと変わらない。
「あ、図星だな。誰ー。」
「・・・先輩、誰にも言いませんか?」
「多分ね。」
「じゃあLINEで教える。それでいいですか!」
「いいよ。じゃあ交換する?」
「菜々ちゃんに教えてもらうから、いいです!というか、菜々ちゃんのこと傷付けたりしたら絶対許さないからね。分かりました?
あと、菜々ちゃんに少しでも恋愛的に興味がでてきたり、分からないことがあったらいつでもLINEしてきてね!色々教えるからー。」
「多分そういう機会はないと思うけどありがとう。じゃあね。」
「それでは、失礼しましたー。」
「あーい。」
俺が水原さんを好きになる。そんなことはあるのだろうか。無いとも言いきれない。実際、塾での一瞬の出来事でも水原さんという存在に興味が出た。だから、心まで奪われるなんてこともなくはない。まあ、それが起きる可能性は低いが。
因みに、家に帰ったあとは春奈ともLINEをした。結果3日ほど掛かったが好きな人は、俺と同級生の友達だということが分かった。
そして水原さんからは、春奈が変なこと言ってごめん!という内容のLINEがきていた。一体何があったにか聞き出したかったが、それに突っ込むとまた知らぬ間に春奈に情報がいって、色々文句を言われるに違いないのでやめておいた。
そして、予想外のことに俺は今後春奈にすごく感謝するようになる。まあ、それはまだまだ先だが。
そして今週俺は水原さんと直接色々話すことになるとは、この時はまだ全く考えていなかった。