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俺、仕えることになりそうです


「まだ痛ってえ……」


 俺が顔をさすっているとエイルが心配そうな目でこちらを見ている。


「大丈夫ですか?賢人様」


「ああ、油断してたとはいえ、あいつどんな力してるんだよ……」


 リサから握手を求められたあの時、どうやら俺はスキルである武器破壊の力を発動してしまっていたらしい。武器破壊っていうのはどうやらリサの着ていたような鎧みたいな、防具にも作用するようでーー

 完璧に油断していた俺は、リサに顔を思いっきり殴られ、意識を失ってしまったらしい。

 今はベッドの上に寝かされているがもう特に問題はない。傷が何も残っていないのは、回復魔法が得意なエイルのおかげだ。

 

 それにしても死んだかと思ったぜ。本当に恐ろしいパンチだった。意識だって、今さっき回復したところだし。


「鎧壊しちゃったのはわざとじゃなかったんだけど……分かってくれてるかな?」


 もちろん、リサの裸を拝めたのは、かなりラッキーだった。けど、異世界に来てまだ間もない俺はスキルの使い方すらいまいちわかっていいないので、さっきのことはもちろんわざとではなかった。俺がそう呟くと、エイルは優しく微笑んでいる。


「分かっていると思いますよ?リサが誰かを認めて、握手を申し出るだなんて、初めて見ましたから。さっきのことも、わざとではないとわかってくれているでしょう。」


 うーん。そうだといいんだけど。


コンコンコン


 部屋のドアの音が聞こえる。


「ほら、言ったでしょう?おそらく、リサですね。それでは、私は部屋の外に出ていますね?」


 エイルはベッドのそばにある椅子から立ち上がると、ドアまで行ってリサと何か話している。その後、ニコリと微笑んだ後、部屋の外に出て行った。

 エイルと入れ替わりに、リサが入ってきてくれる。


「す、皇賢人、さっきは、その、すまなかった。」


 リサは頰を赤らめながらこっちをチラチラと見てくる。あ、どうやらわかってくれてたみたいだ。俺も、ちゃんと謝っておかないと。


「いや、俺の方こそ、その、ごめん!!まだ、スキルっていうものに慣れてなくて、なんか暴発しちゃったっていうか……」


 俺がそう言うとリサは慌てた様子でいる。


「いや、それは、もちろんなんとなくわかっている!貴様の剣からは、悪意を感じなかった。師が良いのだろうが、お前の人柄がよくわかる、誠実な剣だった。その、本当に、だから……事故だということはわかっている。さっきのことは、忘れてくれると嬉しい」


 俺は少し安心する。どうやら怒ってないみたいだし、仲良くなれるかもな。


「よかったー。さっきみたいな事故でリサに嫌われるのは、なんだかちょっと寂しかったからさ。なんか、安心したよ」


 俺がそう言うと、リサは安心した表情を浮かべている。だが、さっきまでの狼狽した様子から一転、今度は真面目な表情になった。


「それで、なんだが。さっきはうやむやになってしまったが、改めて無礼を承知で頼みたい。エイル様の騎士として、あの方に仕えてはくれないか?」


 俺は一瞬、耳を疑った。今、騎士って言ったか?


「え?き、騎士って?いや、いきなりそんな事言われても……それに、俺みたいな見ず知らずの奴がいきなり、一国の王女様に使えるって……色々まずくないか?」


 すると、リサは真剣な顔で見つめてくる。


「それに関しては、大丈夫だ。なんて言ってもこれはその王女様、エイル様からの直々の要望でもあったからな。最初は私も、何故こんな見ず知らずの奴を、と思ったが、お前の実力なら、私も文句はない。」


俺が少し考えていると、リサは言葉を続ける。


「頼む。エイル様は、生まれ持ってのスキルの影響もあって、他国のものに襲われることも多いんだ。それに……エイル様はああ見えて、結構用心深い人でな。お前に対してのように、ここまで人に信頼を寄せる姿は見たことがないもので……。」


 リサは少し寂しそうな顔をしている。何か、あるのかな?


 ーーまあ、せっかく異世界に来たんだし、王女様の騎士っていうのも案外いいかもしれない。今の所、特にやる事もないし、何よりこうやって住まわせてもらえるのはありがたい。


「わかった、俺でよかったらよろしく頼む。」



ーーーーーーーーーー



「それでは、また明日な。」


 リサが部屋から出て行った。

 どうやら、俺が寝かせられていたこの部屋がこれから俺が住む部屋らしい。結構豪華なんだよな。


「それで、なんで羽衣はここにいるんだ?」


 羽衣はさっきからずっと俺の部屋にいるというのに、ずっと黙り込んでいた。


「へや……」


「ん?へや……?」


「へ、部屋がないのじゃーっ!!!」


 え?部屋がないってどういうこと??


「じゃから、妾の部屋が用意されてないのじゃ!!」


 え、えっとー。


「なんでも、賢人のことは……予知じゃったか?それで来るのが分かっていたから部屋も用意してあったんじゃが、妾のことは知らんと申しての!!あの小娘、妾を誰じゃと思っとるのじゃ!!この妾に、野宿でもしろというのか!!まったく!」


 どうやら、羽衣はエイルに対してご立腹のようだ。まぁ、確かに、それは困ったな。もう夜だし、今から近くの宿を探すといってもーー


 エイルから聞いた話では、この町は冒険者の人口が多いからか、どこの宿屋も夕方ごろには部屋が埋まってしまううらしい。


 よし、しょうがないか。


「あー、俺が寝ちゃった後で悪いんだけど、ここの部屋、使えよ」


「……は?」


 俺がそう言うと、羽衣は驚いたような顔をしている。


「いや、今さっきまで、俺ずっと寝てたわけじゃん?体調はもう問題ないし、そんだけ寝てたわけだから寝れそうになくてさ」


「い、いや、じゃからといって……」


 うーん、遠慮してるみたいだな。羽衣はお嬢様っぽいけど、なんだかんだいい奴だからな。ここは強引に行くしかないみたいだな。俺はベッドから降りて靴を履いた。


「よっ…と。よし、それじゃ、また明日な!ちゃんと寝ろよ!」


「お、おい!賢人!?」


 俺は羽衣を部屋に残して外に出て行った。流石に一緒の部屋にってわけにもいかないし、女の子を外で寝かせるわけにはいかないからな。


「……まったく、この馬鹿者め」



ーーーーーーーーーー


「んー……」


 特にすることもなかったので、俺は町の夜市に向かった。さっき、城の門番をしている兵士に、夜に時間を潰すにはどこに行ったらいいか、と聞くと夜市をおすすめされた。


 ここ、始まりの町はギルドがとても盛んだという。

 ちなみに、モンスターのドロップするアイテムは他の動物などのものより、丈夫らしいし、魔力を帯びているものが多いので、そういったものはいろいろな日常品にも使われているらしい。


 大抵、兵士は町にモンスターが入ってこないようにと、町の守護に専念しているので、町から出ることはほとんどないそうだ。


 なので、国がギルドに依頼し、町の外まで出て行くギルドメンバーがモンスターを討伐する。当然、モンスターからドロップしたアイテムは冒険者のものなので、冒険者は自分で直接売るか、ギルドに買い取らせる。


 ギルドからの 報奨金とドロップアイテムの売買。それがこの世界の冒険者の主なお金の稼ぎ方なんだとか。


 俺もギルドからの報奨金をもらったので、この機会に最低限、自分用の装備を整えるのも悪くないかな。


 そう思いながら夜市を歩いていると……


「ねえねえ、そこのお兄さん」


「ん?」


 後ろから声をかけられ、俺は振り返った。


「私、迷子になっちゃったみたいなんだけど、お父さん知らない?」


 そこにはフードを被った黒髪の小さな女の子がいた。


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