俺、連れてかれました
「そこのお前っ! 大人しく剣を下ろしなさいっ!!」
「え?」
俺は戦いを終え一息ついていると、1人の美少女に声をかけられる。なにやら、後ろには屈強な男2人が控えている。
いや......先頭に立ってるこの人、めっちゃ可愛いぞ!!??
大きな瞳にすっと通った鼻筋。燃えるように赤い美しい髪は肩のあたりで切りそろえられている。
鎧によって胸当てに籠手、脛当てなど最低限のところは守られているが、どちらかといえば軽装。腰には細い西洋剣がかけられていて、その鍔には髪と同じく赤いルビーのような宝石が散りばめられている。
いわゆる、姫騎士と言った装いでキリッとした表情を見せてはいるが、どこか可愛らしい印象が残っているのがさらに良い。
「この国では珍しい黒髪に黒い目の少年。ボルドーを倒したそのお手並み、お見事です。
あなたが皇賢人ですね?我がヴァルハラ帝国の第三王女、エイル・フォン・ヴァルハラ様がお呼びです。ついて来なさい!!」
「な、なんで俺の名前を?? いや、ていうか、そんなこと急に言われても......」
俺が文句を言うと左隣に控えた険しい顔をした男が耐えきれない、といった様子で怒鳴ってくる。
「黙れっ!!貴様、この方を誰とーー」
すると、赤髪の姫騎士はすっと左手をあげて制する。
「無礼なのは承知しています。ですが、これは勅命です。 どうか、ご同行を」
隣に来た羽衣に目配せをする。だが、どうやら羽衣もなぜこんな状況になっているのか分からないようだ。
なんだ、一体どうなってるんだ?
ーーーーーーーーーー
俺と羽衣は、姫騎士に導かれるまま後ろをついて行く。本当なら、ボルドーとの戦いを終えたらギルドから貰った報奨金で真っ先に宿の算段をつけるつもりだったんだけど......どうしたものかな。
勅命とまで言われているなら、断って逃げると言う手はないだろう。そんなことで国家反逆罪などと難癖をつけられても困るし......うーん。
街の中心には城のような建物が建っている。今回俺を呼びつけている王女さまは、普段は首都の王城にいるらしいのだが、今はたまたま用があってこの街に来ているらしい。
「ここがエイル様のいらっしゃる広間です。
......エイル様さまが中でお待ちだ。皇賢人、お前には私と2人で来てもらう。連れの方も、よろしいですか?」
「うむ、好きにするのじゃ」
羽衣も一応空気を読んでくれている。よかった。
俺は姫騎士さんに連れられて部屋の中へと入った。
「.........まじか」
目の前には、恐ろしいほどの美少女がいた。お姫様が可愛いのなんて創作物の中だけだろうとか思ってた神様、本当にごめんなさい。
目の前の少女はまるで作り物であるかのように美しかった。目は丸く大きく、瞳の色はエメラルドかと見間違えるほどに美しく、滑らかなシルクのような金髪は曇りなく澄んでいて、ふんわりとウェーブがかかっていてどこか神聖な雰囲気を醸し出している。
気品という言葉がここまで似合っている人を俺は今までの人生で見たことがない。
「あなたが、皇賢人様ですね?お待ちしておりました。私の名はエイル・フォン・ヴァルハラ。ヴァルハラ帝国の第三王女です。」
「あ、は、初めまして!! す、皇賢人と申します!!こ、この度はお招きいただき、た、大変恐縮ーー」
「ふふふっ、そんなに緊張なさらないでください。そうそう、リサ、貴方は下がって良いわ」
緊張するなって言われたってなぁー!なんか、オーラ出てるし、違う世界の人見たいっていうか、なんか緊張する......
それにしても、姫騎士、名前をリサっていうのか。
「し、しかし、エイル様っ!い、いくら何でも......」
「良いのです。貴方は知っているでしょう?」
「くっ......わ、わかりました。エイル様、何かあればすぐお呼びくださいっ。皇賢人、エイル様に何かしたらただでは置かないからな!」
リサと呼ばれた子は渋々といった様子で部屋から出て行く。なんであの子さっきから俺に当たりが強いんだ?
リサが出て行くと、王女様は何やらぷるぷると震え始めている。
え、なに?どうしたの?
「会いたかったですわっ!!!!賢人様ぁっ!!!」
俺の胸に、何か柔らかいものが飛び込んで来た。