俺、ギルドに入りました
「なるほどの。古流武術とな、ふむ......」
俺が自分の戦闘技術のルーツについて説明していると羽衣は何やら考え込んでいる。するとーー
「うわっ!? なんだこれっ!??」
俺は自分の体の感覚の変化に戸惑った。突然体が軽くなり力がみなぎってくる。なんだこれ!??
「ああ、丁度今、レベルアップしたんじゃろうな。ステータスを見てみるがよい」
これがレベルアップの感覚なのか、流石にゲームみたいに派手な効果音が出たりはしないんだな。
ええと......
皇賢人 17歳 男 異世界人
レベル :6
HP :50/50
MP :29/29
力 :35
耐性 :31
魔力 :28
幸運 :∞
装備 :鉄の剣
:皮の服
所持品 :ミノタウロスの角
スキル :古流武術 S
「うわっ、いきなりレベル6!??」
俺の言葉を聞いて羽衣は満足そうな顔をしている。
「当たり前じゃろう。相手が強ければ強いほど経験値は増えるしの。ミノタウロスなど、普通はレベル1で相手にするものではないのじゃ!」
なるほどな。この感じからすると、もしかして俺のレベリングって結構効率いいんじゃないか?気分が乗ってきたぜ!
「よーしっ。羽衣!俺は次はどんな奴と戦えばいいんだ!?」
「いや、もうここらには相手なる奴なぞ、おらんぞ?」
え、えぇー。
ーーーーーーーーーー
「それで、来たのがなんでこの建物なの?」
俺たちは草原を抜けた後大きな街に入った。街の入り口には衛兵が居たが、羽衣の言う通り、ミノタウロスの角を見せて冒険者だと名乗ると慌てて頭を下げながら入れてくれた。
そして羽衣に言われるままついて来たのがこの大きな建物の前だったのだ。
「そもそも、そこらの草原に人外の化け物がうじゃうじゃいれば人間など生きておれんじゃろうが。そこで、人々の暮らしを脅かす物を退治して生計を立てるものーーそれが冒険者じゃ」
「なるほどな。確かにそれは理にかなってる。つまりここは、傭兵団の兵舎みたいなもんか?」
「それはそれで別にあるのじゃが、ここの世界はお主らの世界で言う剣と魔法のふぁんたじーとやらじゃ?基本的に個人技なのじゃ!大体組んで二、三人といったところじゃろうよ」
「それで、ここで俺はその依頼を受けるべきだって話だな」
「当たり前じゃ。そもそも金がなくては宿も使えんのじゃ。疾く働くとよい!」
......こいつ、前も思ったけど結構ワガママだよな。箱入り娘って奴か。うん、なんか腑に落ちない。よし、決めた。
「いや、働かないなら、宿代払わないよ?」
ーーーーーーーーーー
「くそーーっ!!!なぜ妾までこんなっ!!!」
俺はギルドの受付嬢にEクラスギルドメンバーとしての登録を済ませた後クエストを申請した。ギルドではE〜Aクラスまで登録できるらしく、国から認められるほどになるとSクラスクエストも受けられるようになるらしい。
受付嬢からは、もちろん初めから難しいクエストを受けるべきではないと説明を受けたが、ミノタウロスの角を見せて1人で討伐したと話すと納得してくれた。意外と強敵だったんだな、ミノタウロスって。
そして今俺たちが何をしているのかと言うと......
「おっ、ほっ、よっと!」
「ぬぅーーっ、数が多いのじゃーっ!!」
今すぐミノタウロスより強い奴を討伐するクエストはないそうなので、Dクラスで一番報酬が高いブラッディウルフの巣の討伐というクエストをえらんだ。ちなみに、ギルドでは1つ上のクエストをクリア出来るとクラスアップできる。
「くっ、とっ、やっ、はっ!!」
俺と羽衣は次々と狼型のモンスターを切り倒して行く。数が多いのが厄介だが俺は苦ではなかった。
驚くべきは羽衣の動きだろう。箱入り娘だろうと思って舐めていたが中々に洗練されている。
「お前っ、なかなかっ、やるじゃん!!」
「たわけ!!元々妾はっ、閻魔の家系じゃぞ!本来であれば、こんなものどもっ!たあっ!」
最初こそキツかったものの、レベルアップしながらのクエストであったため、終盤に行けば行くほどどんどん楽になる。
ザシュッ!!
「よっ......と。これで最後か」
「全く、妾を働かせようなど本当にふざけた人間じゃ」
どうやら羽衣も無傷で終わったようだ。こちらが巻き込んだとはいえ、怪我でもされたら気分が悪いからな。
「ちなみに、羽衣のステータスってどうなってるんだ?」
俺がそういうと羽衣は恨めしそうな顔をしながらステータス画面を見せてくる。ん、なんか怒ってるのか?
閻魔羽衣 124歳(16歳) 女 異世界人(閻魔)
レベル :15
HP :76/76
MP :75/75
力 :42
耐性 :61
魔力 :81
幸運 :∞
装備 :閻魔の小刀×2
:閻魔の衣
スキル :双剣術 A
鬼化 S
「見よ、この貧弱なステータスを。父上め、妾のステータスをお主に合わせてしまったのじゃ、お主が早よう強くなってくれんと妾は自分の身すら守れんのよ。困ったものじゃ」
なるほどな、よく見ると俺のステータスを振り直した感じになっている。それにしてもーー
「そのさ、お主っていうの、辞めないか?俺には皇賢人って名前がある訳だしさ」
「ふ、ふむ。な、なるほどの。よ、良いじゃろう。け、賢人」
ステータス
皇賢人 17歳 男 異世界人
レベル :15
HP :95/95
MP :56/56
力 :71
耐性 :58
魔力 :55
幸運 :∞
装備 :鉄の剣
:皮の服
スキル :古流武術 S