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俺、余計に疲れました



「ど、どうじゃ?よい......かの?」



 羽衣は、タオルのようなもので俺の背中を流しながら、控えな様子で俺に感想を聞いてくる。


「っへ?ああ、うん!!そ、そりゃあもちろん!!最高だよ!??」


 やばい、聞き返す時に声が裏返ってしまった。


 それにしても......なんだこれ、なんか分からないけど、すごい緊張するんですけど!?


 それはそうだろう、普段は態度とかも含めてそこまで意識はしないけれど、羽衣は実際、かなりの美少女なんだ。



 そんな女の子がお風呂で背中を流してくれるなんで状況。なにこれ、ギャルゲ?



 俺が緊張のあまりカチンコチンになっていると、羽衣はしびれを切らしたように俺に話しかけてくる。


「な、なんでだまっておるのじゃ!気が利かないのう!!何か喋るのじゃ賢人!これでは、き.......気まずいではないか!!」



「え、ええ!??......そ、そんなこと急に言われてもな......」



 羽衣から言い出したくせに、そっちまで緊張しているんじゃこっちだって、どうしたらいいものか......



 でも確かに、無言でただ背中を流されていると言うのも確かに気まずい。なにか話さないと。うーん......



「あ、そういえば、天使と戦った時、羽衣の額から二本の角みたいのが生えたと思ったら、いきなりめっちゃ強くなっただろ?あれって、なんだったんだ?」


 俺が今日の戦闘の時の事を思い出し質問すると、羽衣は「ああ」と言ってそれについて答えてくれる。


「あれは、『鬼化』といっての。本来の妾の、閻魔の血族としての力を解放する、スキルみたいなものなのじゃ。簡単にいうと、『パワーアップ』じゃな」



「そうなのか?そんな便利なものがあったなら、普段から使えばいいのに。なんで今まで使わなかったんだよ」



 俺がなんとなしにそんな事を言うと、羽衣は気まずそうな顔をしている。


「いや、あれじゃろ、なんて言うか.......見た目がー、の」


「見た目?」


 俺が聞き返すと、羽衣は遠い目をしている。



「あれ、見てくれがかなり悪いじゃろ?それに、なんと言うか、いわゆる闘争本能みたいなものが強まってしまうからの。戦い方も美しくないし、思い返すだけでもとても気分が悪くなるのじゃ.......」



「あ、あー。たしかに。凄かったもんなー」


 今思い出しても、あの様子には戦慄する。


 自分の身体へのダメージを考えず、天使の羽をむしりまくって血塗れになってると思ったら、いきなり持ってる双剣で滅多刺しにしてたもんな。


 まさに、鬼だった。



 俺がその時のことを考えていると、羽衣は慌てて俺を叱りつけてくる。


「こ、こら!!思い出すでないわ!!......だから妾も、あれは使いたくないのじゃ」


羽衣は「はぁ〜」と長いため息をついた後、話を続ける


「それに、さっきの感じからして、異世界に連れてこられレベルに制限がかかった今の妾では、鬼化は持って3分くらいしかなれないみたいじゃからの。また使えるようになるにも、それなりに時間がかかりそうじゃし......あんまりあれには、期待せんでほしいのじゃ」


 三分か。なんか、ウル◯ラマンみたいだな。それに、充電期間みたいなのも必要だと考えると、おいそれと使えるものではなさそうだ。



「まあ、わかったよ。そもそも、ずっと羽衣の力におんぶに抱っこってわけにもいかないしな。巻き込まれちゃった事はわざとじゃないんだからしょうがないんだし、みんなを守れるように、俺も強くならなきゃ」


 羽衣は、俺の言葉を聞くと、何やら不安そうな顔をしている。


 なんだ?どうしたんだ?



「巻き込んでしまった妾が言うのも、おこがましいと言うことはわかっておるんじゃが.........前から思っておったんじゃが、賢人はすこしーー」



 羽衣がなにか言いかけた時、突然後ろの扉がバタン!と開け放たれる。



「賢人様っ!!エイルでございますっ!!!お疲れでしょうし、お背中を流しに......って、あら?」


 エイルは俺たちを見て固まっている。



 しばらくすると、エイルは満面の笑みを浮かべている。


 ......あれ?なんでだろう?なんか、笑顔のはずなのに寒気が止まらないんだが。



「賢人様。なぜその黒いのが一緒にいるんですか?」




ーーーーーーーーーー



「な、なんか、風呂に入って癒されるはずが、余計に疲れた......」  



 俺は部屋に戻り、久しぶりにベットの上で寝転がっていた。


 あの後は、とにかく大変だった。


 俺が説明をしようとすると、羽衣は「二人の蜜月の時を邪魔するでないわ!白いの!」とか言い出すから二人はいつもみたいに喧嘩し始める有様だし。



 騒ぎを聞いてやってきたリサには状況の説明を殺意たっぷりに迫られるし。



 普段は二人の争いを諌めてくれるリサまでその争いに乗っかっていったのだから、俺にはもうどうしようもなかった。


 今さっきどうにか3人をなだめて、やっと部屋に戻ってこれたという次第だ。



 元々武術で体を鍛えていたし、この世界に来てレベルアップだのなんだので体力はだいぶついたと思うが、精神的な疲れはどうしようもない。



 久しぶりにふかふかのベッドで寝ることができることだし、今日はゆっくり休むとしよう。



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