表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星天の家系図  作者: 夜城 宴
優美のハニエル
9/14

8.血縁関係その1

「がぁッ!?」


軽い意識の暗転の後、亮は奇声を上げて起き上がった。


「あ、お兄さん……じゃなかった。お兄ちゃん、いらっしゃーい!」


どこからか間延びした声が聞こえ、後ろを振り返ると、予想通りローズルがいた。そして周りを見ると、以前現世に戻った場所である、居間にいることが確認できる。

ローズルは以前と違い、真紅の髪をツインテールでまとめてある。

色々とローズルや寺坂……いや、こちらの世界ではフーリでいいのか…。ともあれ、その二人に聞きたい事や物申したい事は山ほどあるのだけれど、まずは今、多少引っかかったフレーズがあったので問うてみる。


「お兄さんとお兄ちゃんって、なにか違うのか?」


いや、考え直すとやはりどうでもよかったと後悔する。


「うん!違うよ、全然!」


「お兄さんだと他人行儀っぽいからか?」


それだとしてもお兄ちゃんはさすがにない気がするが……。


「違うよ!お兄ちゃんは本当のお兄ちゃんなの。ってこの本に書いてあったから」


「これは……」


ローズルが小さく細い腕で手渡してきたのは、以前フーリが消える前に、ぶん投げていた例の赤い本。あの時は勝手に他人の書物を読み漁ってはいけないと、あえて触れなかったのだが…。

読みやがったのかコイツは……。


「?」


亮がローズルを見るも、特に悪びれた様子もなく、きょとんとした顔をしている。

それどころかなんで早く読まないの?といった視線まで送ってくる。仕方ない。フーリになぜ勝手に読んだのかと聞かれたら、コイツのせいにしよう。

それでも許してくれる気はしないが……。


「怒られても知らねぇぞ……」


半ば、自分に言い聞かせるようにして、ページをめくる。

そしてまず最初に気づいた事は、この本は文がまとめてある物というより、資料に近い類だという事と、文字が明らか日本語ではないのに、何故か読めるという事。もう既にこの言語を知っていたかのような不思議な気分だ。

肝心の内容は、題名の【神様の家系図】の通り、大まかな北欧神話の血の繋がりが記されていた。


「ん〜と。あ、あった。」


その家系図の中心部に[オーディン]と大きく書かれているのを見つける。


「たしかにオーディンとローズルは兄妹の血縁関係にあるみたいだな……」


「でしょー!だからお兄さんじゃなくて、お兄ちゃんなのです!」


ふんす!と無い胸を張るローズル。

ここで一つ、に気なることができた。それは、自分は誰と結ばれるのであろう?という事。

オーディンは有名だが、その妻などは聞いたこともない。自分と結ばれる人は誰?、という誰しもが気になる事であろう問の答えが、この本に書いてあるのだ。

亮は期待と少しの不安を抱え、目線を再度、本に下ろす。


「んん?フリッグ?聞いたこともない神様だな」


「あぁ!それはね!───」


ローズルが何かを言おうとしたその時、二人の真横に突然フーリが現れた。


「うわっ!」


急な出現に亮が仰け反っている間、フーリは自分の書物が亮の手中にあることを確認する。


「……。それ、勝手に読んでいいって言ったっけ?」


まずい。殺られる。亮はすぐさま本を机に置き両手を上げる。


「いや、それはだな、ローズルのやつが無理に──」


「私止めたのにー。お兄ちゃんが絶対読むって聞かなくて……」


「てめぇこのチビ!」


見事なまでの裏切りである。


「………」


そしてフーリからは、殺気のようなものが目に見えて出てきている。しかし、しばらく亮を睨んでいたフーリは身を翻し、亮に危害を加えずに歩いていった。


「……助かった…のか?」


生きている喜びを数秒間、感じていると、スタスタと再びフーリが手に何かを持って戻ってきた。

よく見ると、ごつい手枷のような腕輪らしかった。何かしらの拷問器具だろうか……。


「あの、それは?」


「いいから着けなさい」


冷や汗をかきながらも、今は命令に従わざるを得ないと、しぶしぶ重い腕輪を装着する。


「これで一体なにが───ぶべらァッ!?」


質問をする前に強烈なアッパーカットが亮の顎に直撃した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ