初恋
彼女は恋に気づかない
多くの人は、初恋というものをしているものだ。
僕もその一人である。
それは幼いながらも淡い初恋だった。
「一緒に遊ぼう。」
人見知りでなかなか友達が作れなかった僕に話しかけて、引っ張っていってくれた。
そんな彼女が好きだった。
でもその気持ちに気づいたのは、彼女が遠くに引っ越してしまってからだった。
「今頃どうしてるかな。」
新しい学校生活。
僕はまだ、彼女のことが忘れられないでいた。
せめて連絡先を聞けてたら何かが変わったのだろうか。
いや、奥手な僕にそんなことができたはずがないか。
「ぃよっ!なんだ、思いにふけって。また初恋の女の子のこと考えてるのか?」
ぼんやりと考え事をしてたところで、誰かに背中を叩かれた。
ビックリして振り向けば、彼女と入れ違いで仲良くなったコウジだった。
いじられてはいるが、すっかり腐れ縁だ。
「べ、別に。何も考えてないって。」
「またまたぁ。お前とは長い付き合いになるからよくわかるんだよ。ほんっと好きだよなぁ。」
「もうその話はしないでくれよ。子供の頃の話だろ?」
「でも、まだ好きなんだろ?その子のこと。」
「そ、それは。」
「なんて名前の子だっけ、えっとー。」
「あれ?もしかしてシロウ?」
「え?」
どこかで聞いたことのあるような声が、僕を呼んだ。
そこにいた女性には、あの彼女の面影があって・・・。
「まさか、エマちゃん?」
「やっぱりシロウだ!久しぶりー!」
「え、本当にエマちゃん?公園の隣に住んでた、あのエマちゃん?」
「そうだよー。シロウは変わらないね。」
そう言って笑う彼女は、昔とはまた違って魅力的で。
僕は言葉を失った。
「おいおい、まじでかわいいじゃん。この子が例のエマちゃんか。でも、遠くに引っ越してたんじゃ。」
「また引っ越しして戻ってきたの。でもこんなにすぐに会えるなんて嬉しい!」
子供の頃に終わったはずの初恋が、また。
僕の目の前に現れた。
「これからまたよろしくね!シロウ!」
中学一年生、春。
僕らの青春は、始まったばかり。




