8/11
気付きたくない真実
「どうして俺がこんなこと言いだしたと思う?」
「分かりません」
「意外に察しが悪いんだね、君は」
「……。」
「ちょっと考えてごらんよ。明晰夢と世界五分前仮説」
回りくどいことは嫌いだ。
はっきりと答えを出してくれた方がスッキリする。
……。
「さすがに五分前にできたとは思っていないよ。そうだな、大体、15年くらい前かな?」
15年?
けれど、僕の街には歴史的建造物だってあるし、100年前の書物がある。
……でも、もしそれらが作られた記憶だったら?
明晰夢……夢、夢の中。
まさか……?いや、そんな。
「分かってきたみたいだね」
いや、そんなことありえない。
「気付いたんだろう?」
ありえない、ありえない、誰がそんなことを信じるんだ。
「輝久の住む、この世界が夢だってことを」