願わぬ出会い
『やあ、こんにちは』
彼がいた。
父と母がヒーローだと言う。
クラスの皆が英雄だと言う。
彼がいた。
僕の悪い予感はよく当たる。
「こ、んにちは」
『僕のこと知ってる?』
初めて間近でみた彼は若い。
僕と同い年だろう。
その顔は酷く……自分に似ていた。
「……はい」
さっさと逃げてしまいたい。
また怪獣が現れるかもしれないのに。
『そうか、そうだよね』
口元を手で隠してクツクツと笑う。
「あ、じゃあ僕はこれで……」
そそくさと逃げようとする。
彼の前を通るのはなんだか怖いから回れ右をしてもと来た道を戻ろうとした。
『ねえ、待ってよ』
そう彼に告げられると足がピタリと止まって動かなくなる。
「え……」
『君は何歳?』
「僕は15歳です」
自分の意思とは裏腹に口から勝手に言葉が出ていく。
「あれ?」
不思議に思っても何も分からない。
足もいまだに動かない。
『ねえ、ちょっとこっちで喋ろうよ』
「はい」
勝手にそう言うと体は動き彼の隣に座る。
『君の名前は?』
「僕は輝久です。」
『そうか、僕の名前も輝久って言うんだ』
ニコリ。彼が笑う。
少しゾクッとする。
その笑顔がどこかで見たことあるような気がして首をかしげる。
『どうしたの?』
「いえ……」
『そう?君は――』
彼がそう言いかけた時、空が徐々に明るくなり始めた。
『おっと、もう時間か』
そう言うと、彼は足先から消えていった。
『またね』
その言葉を残して。
「またって……二度とないことを願うよ」