悪い予感ほどよく当たる
「最近は日が長いなあ」
僕の友達のA君だ。
「そうだね」
最近は夜中の3時まで明るいことが多い。
酷ければ夜にならないまま、朝になることだってある。
「まあ、明るいに越したことはないな」
そう言ってからから笑うA君を見ながら、また「そうだね」と小さく返事をした。
そのまま二人で素振りの練習をする。
野球クラブに入っている僕たちは毎日公園に集まり、少し重めのバットを振るのが日課になっている。
毎日続けていたせいか、結構な勢いがつくし腕にも筋肉が付いて来たような気がする。
ふ、といきなり真っ暗になる空。
「おお、珍しい。まだ昼過ぎだと言うのに夜になった」
1日半振りの夜だ。
「すぐに電灯がつくから明るくなるよ」
それまでの明かりとして携帯用の光源を僕たちはカバンから出す。
いつどこで夜になるかは分からないから、携帯と同じくらい普及している。
パパパッと道の電灯が付いていく。
ある程度の明るさになってから僕たちは光源をしまい、帰り仕度を始める。
「まだ帰るのは早いんじゃねえ?」
A君は僕にそういうけれど、なんとなく嫌な予感がして曖昧に返事をして別れを告げた。
帰り道。
早く帰りたいと言う気持ちに従って近道を使う。
路地裏に周り早歩きで通り抜けようとする。
どの道でも明るい電灯が付いているから怖くない。
それでも早く駆け抜けたくていつしか僕は走り出していた。
「――ハッハッハッハッハ」
息が荒くなっていく。
悪い予感はよく当たるんだ。
急げ、急げ、急げ。
あと角を3回曲がってフェンスを登れば家じゃないか。
じんわりと、暑くもないのに汗をかく。
心臓がどくどくと脈を打っているのが分かる。
苦しい。
そう思って少しだけ歩を緩めて歩く。
ドクンドクンと心臓が動くたびに振動で頭痛がする。
もう少し……A君と居ればよかった。
苔の生えた壁に手をついて角を曲がるとそこには――。