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夜直し部の深夜活動  作者: lazy rabbit
水無月
7/21

ガールズトーク

 午前二時十六分。屋根。

 少女は苛立っていた。呼び出したのは少女の方だが約束の時間に来ないなど言語道断。しかしそう思いながらも少女の顔はいつのように冷静だった。

 つい口から出そうになるため息を出る直前で飲み込む。ため息はつかないようにしていた。つけば幸せが逃げる。これ以上逃すわけにはいかない。

「わーらちゃん! どうもこんばんは」

「そのフードに猫耳の付いた寝巻きは対抗心ですか」

「え! なにそれ、どうゆうこと?」

「自分に訊ねてはいかがですか」

 常に笑を含んだ彼女の口元がさらに上がる。

「勝手に心を覗くなんて盗撮してるみたい」

「盗撮なんて大した罪ではありませんよ」

「まぁ、わらちゃんに言わせればそうなのかな」

 少女は言葉を返さず腰を下ろした。それと同時に彼女もフードをとりその場に座る。

「さて、本題ですが」

「本題? わらちゃんとそんな重大な話すことあったかな? そもそもわらちゃんと話す必要あったのかな?」

 意地悪をして楽しむようなそんな声音。

「遊来さんが話すことには重要性がなく、どうでもいいようなことばかりですが私の話すことには明確な意味があります」

「重要性なんて私は求めてないよ。面白ければいい、それで十分」

「面白さだけを求める人生はそれほど面白くなりません」

「一理でしかないね、そんなの」

 少女は意味ありげに鼻を鳴らし返答の代わりとした。

「では本題ですが何故ひよりという自殺者を英一と会わせたのですか」

「ひーよのことかな、かわいそうだな自殺者なんて」

「違うのですか」

「ご明察って感じだけどね。また、ロリちゃんの心を読んだのかな」

「はい、ひよりさんのことをずっと英一様は考えていました」

「まさかロリちゃんがひーよのことを自殺した人だなんて推測したわけじゃないよね」

「私が推測しました」

「さっすが! 敏いね、わらちゃんは」

「普通、死にたいという感情を抱いているときに運良く死ねるなんてそんなのは希です。大型運搬車にわざと飛び出したのでしょう」

「それは経験則なのかな?」

 彼女は少女に向けて嘲笑する。少女は少しの間黙りこみ、話を戻す。

「何故、会わせたのですか」

「それがねー、ひーよ話たいことがあるんだけど私じゃダメって言ったの、もちろん遠まわしにだけどね。ねえ、なんでだと思う?」

「そういうことですか、簡単なことです。それは遊来さんが人間ではないからです。ひよりさんは人に裏切られたような経験をしたようですがそれでもなお、人間を求めたということです」

「なんで? 過去の自分と同類なのがよかったのかなぁ」

 少女は彼女と同じような意地悪をして楽しむような声音で言い返した。

「人間以外、信用できなかったのでしょう。特に遊来さんは。というか気づいていたのではないですか、だから幽霊の見える英一様を適任だと思い、テストと言って行かせた」

「相変わらず話の理解が早いね、脱帽だよ、まったく」

「私に問題を出しながら話すのやめてもらえませんか」

「ごめんごめん、ちょっと面白かったから」

 少女はまたも出そうになったため息をこらえてから言葉を発する。

「これは雑談の話題なのですが」

「お面白い話ならいいよ」

 彼女は座っている状態からパタリと横に倒れる。少女は俯きさっきより小さな声で言った。

「努力は無駄だと思いますか」

「それはロリちゃんが考えていたのかな?」

「そうですね、ひよりさんに会ってから帰ってきて一番考えていました」

「努力か、そうだね~」

 彼女は横になった状態で腕を組み、考えだす。

「まあ、結果に対して無駄なことはいくらだってあるよ、達成できないのがほとんどだからね、でも、自分にとって無駄にはならない、じゃないかな?」

「そう、ですね。しかし実際には望んだことがなにより結果として出て欲しいものです。努力をすれば良い結果になると保証が付いていればおそらく努力をする人が増えるでしょう、でもそんなことはありえません。だから傷つかないために努力をしないというのは、身を守るという点で利口、だとは思いませんか」

「またまた、そんな悲観的な持論を、明るくないと人生やっていけないよ」

 間髪いれずに少女は反駁する。

「私の言ったことは一般論です」

 彼女は鼻で笑い、起き上がり、座りなおす。

「そんな一般論の世界はやだな、面白くないもん」

「現実なんてそんなものです」

「まったく、ネガティブな女はモテないぞ!」

 いやいや、と少女は首を横にふる。

「そんなの一理でしかないですね」

 言葉を真似されたせいか彼女は頬を膨らませるが言い返さない。

「さて、私は帰ろうかな」

 彼女は立ち上がり可愛いい色をしたパジャマの裾を軽くはらった。

「気を付けてお帰りください、最近は通り魔がいるようなので」

 彼女は快活に笑い少女の黒髪に手を載せる。

「そのジョーク最高!」

 そう言いって彼女は屋根を軽快に走って行った。暗闇にまぎれていく彼女の背中はだんだんと小さくなり、いつの間にか消えていた。

 一人になった少女は夜空を数秒見上げ、ベランダから家に入り布団にもぐった。




読んでくださってありがとうございます。

これで一話は終わりました。

眠気に負ける毎日を過ごす私ですがこれからも頑張りたいと思います。

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