桃太郎の裏のおはなし
昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯していると、川上からドンブラコ~ドンブラコと桃が流れてきました。
その頃鬼ヶ島では、多くの鬼が不測の事態に慌ただしく動き出していました。
鬼たちは古代より自然の力を信じ、その力と共に生きてきました。だからこそ彼らはその力が暴走する時を知ることが出来たのです。地震や津波などを事前に察知する能力を彼らは持っていました。桃が川で流れていたころ、鬼たちは数年後に大きな地震が来ることを知りました。そこで鬼たちは大陸を離れ、とある島に移り住みました。
しかし月日が経ち、鬼たちがいた村に人間たちが住むようになりました。そこで鬼たちは人間に逃げるように言いました。
「ここはのちに大地の力が破滅をもたらす。今すぐ立ち去るのだ、人間たちよ」
「ふん、何を言うか鬼どもめ。どうせワシらを追い出し、この自然豊かな地を手に入れたいだけじゃろ!」
鬼たちはいつの時代も、正義や善とは反対の存在として扱われていました。それは昔も今も、そしてこの時代でも。それでも鬼たちはあきらめず、何度も説得しようと頑張りました。何日も何日も。何とかして人間たちを助けたかったのです。村人はそのたびに鬼たちを追い出しました。数年たってもその誤解は解けませんでした。
あるとき、鬼たちは「せめて、人間たちの未来だけでも救いたい」と考えるようになり、そして決意しました。夜中、鬼たちは人間が寝静まっているあいだに、村の子供たちを誘拐しました。子供たちが起きないようにそっと運び、船に乗せて鬼ヶ島に戻りました。朝になって村人たちは村の宝とも言える子供たちが消えたことに気づき、そして泣きました。
村の宝が消えたと知った桃太郎は、早速鬼退治の支度をしました。
鬼ヶ島では鬼たちは人間の子らを大切に扱いました。子供たちは鬼たちに聞きました。
「ねー、鬼さんたち。ここはドコ?」
「ここは鬼ヶ島、安全な地だ」
「おうちはドコなの?帰りたいよー」
「おうちは危険だ。いつか必ず帰れるから、ここで待っていたまえ」
「お父さんとお母さんはー?」
「…………」
無邪気な子供たちの質問は終わることなく、鬼たちの罪を責めました。
ある日ふと空を見上げると、大きなキジが飛んでいるのを見かけました。
「キジとは珍しい。ん? 門の方に向かったぞ」
すると突然、門の方から声がしました。
「お、おい! みんな来てくれ!」
「どうした?」
「それが……」
「我こそは桃太郎! お前たちを倒し、村人たちの宝を取り戻す。正々堂々、成敗してやる!」
そこには桃太郎、犬、猿、そして先程飛んでいたキジがいました。
「お頭……一体どうすれば……」
「お前たちは大人しく待っていろ、話をしてくる。いいか、決して手を出すでないぞ。我々は人間を守るためにかの悪行をしたのだ。ヤツに手を出せば、何のためにしたのか。その意味が失われてしまうぞよ」
そう言って鬼たちのお頭らしき者が桃太郎の前に対峙しました。
「桃太郎といったか。大人しくこの島を退け。お前たちと戦うつもりはない」
「なんと、それほどに我らを見くびっているのか。いや、それほど奢っているのか。とにかく、村の人たちの宝を返してもらうまで我らは戦うぞ!」
桃太郎は鬼のお頭に刀を向けました。すると他の鬼たちも構えましたが、お頭が手でそれを制しました。
「止めろ皆。桃太郎よ、村の宝は返すわけにはいかないのだ。未来のためにわしらは罰と罪を受けるのだ」
「ふん、聞く耳を持たぬか。仕方ない。力ずくで取り返すのみ! だぁーーー!!」
こうして桃太郎は彼の正義を貫き、鬼たちを成敗して村の宝を取り戻しました。鬼たちはお頭の最後の言葉に従い、何も出来ずにやられました。桃太郎は村に戻り、村人から英雄として永く語られることになりましたとさ。
おしまい
素人なので文法的な間違い、誤字脱字があると思いますが、優しい心で注意していただけると嬉しいです