Umemura's 2
第8話:「B-52と陽気なコンビニ店員」
元旦ってどうして毎年晴れるのだろう?と、この俺は不思議に思った。暦なんて人間が勝手に決めたものなのに、なぜか一月一日はまるで自然界がめでたい日を祝福するみたいに、毎年かならず突き抜けるような晴天になる。
まあでもそんなことどうでもいいや、と俺は自宅近くの小さな神社に初詣に行った。参道の傍らで御神酒を振る舞ってたから、ありがたく頂戴した。
この俺のバー「Umemura’s」の新年は、元日から営業を始める。毎年の習慣だ。
開店準備をしているところにティナがやってきた。「梅村さん!あ、明けましておめでとうございます!」ティナは、ちょこんと頭を下げた。と同時に、店の片隅からナベ君のピアノが聞こえてきた。今年一曲目に彼が選んだのは、マイ・フーリッシュ・ハート。この二人と今年も一緒に仕事ができるということに、俺はささやかな幸福を感じていた。
そのとき、店の入り口の扉が勢いよく開いた。「やあ、梅村さん!いらっしゃいまーせーー」六十歳ほどで明るい髪色の、小柄で元気な女性が入ってきた。
「村上さん、明けましておめでとう。それにしても、いらっしゃいませはこっちの台詞でしょう?」俺はいささか辟易して言った。
「ああごめんごめん、あたしもコンビニ店員、長いからね。口癖っていうの?つい出ちゃうからねえ」村上さんはカウンターのスツールに腰掛けた。「じゃあ梅村さん、今夜はB-52を作ってくださらない?」
「B-52?」俺は驚いて、少し大声を出してしまった。「いいですけど…新年早々、そんなもの注文するお客は初めてですよ」
ショットグラスにカルーア、ベイリーズ、コアントローの順に慎重に、互いに混ざり合わないように注ぐ。三層になったリキュールが、カウンターの上で静謐なコントラストを示していた。
「いってんーー、にてんーー、さんてん。」突然、村上さんがグラス内のリキュールを指でさして数えながら素っ頓狂な声を出したので、俺とティナとナベ君はそろってズッこけてしまった。「む、村上さん。どうしたの?」
「いや、コンビニで商品をスキャンするときのかけ声がセクシーだって若い大学生のお客さんに言われたのが嬉しくてねえ。まだまだあたしも捨てたもんじゃないって、カクテルでやってみたいって思ったの」




