行かないで
夏目視点
「あなた」
泣きながら私の身体が目の前の男に言っている
「必ずまた会いに行くさ」
男はそう言って私に背を向け去っていった。
「行かないで」
そう言いながら飛び立って行くかれがのった戦闘機に手を伸ばし涙を流している。
「お姉ちゃん、はよ起きな」
そうやっていつものように春妃に起こされ私は洗面台の前に立った。何故だろう、そこには涙を流している自分がいた。夏目の思考は停止した。「どうして」「なぜ」その言葉達が頭の中で飛び交って動けなかった。
「お姉ちゃん何してるん?」
春妃が呆れたように言った。
「今からおばあちゃん家行くではよ支度しな」
そう言って春妃は去っていった。
「おーい夏目、春妃まんじゅう買ってきてくれないか?」
と父が言った。正直めんどくさかったが和菓子屋までの道のりは意外と交通量も多く賑やかで海が見えてとても楽しいので行くことにした。
歩き始めてから10分ほどたったころ。前から歩いてくる男とすれ違った。キャリーケースを引いていてどうやら旅人のようだ。だがすれ違った瞬間
懐かしい何かを感じた。そして追いかけたくなった。でもそんなこと今の私には怖くてできなった。
「ちょっとお姉ちゃん?」
「いや、なんでもない」
そのまま夏目と春妃は2人で手を繋いでもちを買いに行った。