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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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極東編:極東7

「ネズミが3匹、紛れ込んだようだな。」

極東の中心、その城の最上階でミカエル様はそう言葉を発する。


「申し訳ありません。すぐに始末させます。」

「すでにグレーティアがやられた。」

「なっ!」

相手は人間では無いのか!?聖族が下界に降りて傷をおうことすらありえないというのに!


「人間ごときにやられるとは、聖族の恥だ。」

「申し訳ありま……」

「それは聞き飽きた。」

今回この極東にきて、人間の支配を任されたのはミカエル様を除き四人の聖族だ。皆、聖族の中でも戦闘訓練を積んだ選りすぐりの存在のはずだ。人間に負けるなど信じられるか……。


「今、ウーテが一人を相手にしている。グレーティアを倒したやつにはローザを、お前は残りのやつを相手にしろ。」

「かしこまりました。」

私はすぐにローザに指示を出し、残りの一人を探しに向かう。と言ってもその場所はミカエル様からの指示があった。


この空間では全ての存在の観測魔法打ち消されている。しかし、その聖法を唱えたミカエル様は影響を受けない。だから侵入者の居場所も簡単に突き止めることができるのだ。


「どうせなら私がグレーティアを倒した人間と戦いたかった。」

四天王であるミカエル様は別格の強さだとして、ついてきた四人の聖族の中では私が一番強いと自負している。いや、私を『残りのやつ』に当てるということは、グレーティアを倒したやつよりも強いという可能性が高い。……気を引き締めねば。



「お前が侵入者……」

確かに人間だ。しかも子供。こんなやつがグレーティアを避けてここまで辿り着くことができるものなのだろうか。


「あ、ばれた。ん、んん、失礼しました。初めまして、私はグルンレイドのメイド、クレアと申します。」

グルンレイド……。どこかで聞いたことがある。あ……グレーティアが何か言っていた。脅威となる人間がいるとしたらその存在だと。ただの妄言かと思っていたが、そうでもないのか?


「やはり私の観測魔法には反応しない……どうしてでしょうか?」

私は敵だぞ。まるで道端で他人と話しかける時のように気さくに質問をしてくる。


「ミカエル様の聖法により、情報は制御されている。」

「やはり聖法ですか。」

納得したような表情になる。どこまでも呑気な人間だ。


「今私たちに服従すれば命までは取らない。」

「でも結局奴隷にされるんですよね。それは嫌ですね。」


「自分の置かれている立場がわかっているのか。」

「あなたこそ、自分の立場を確認した方がよろしいかと。」

その瞬間膨大な魔力がこの空間を包み込んだ。


「その魔力密度は一体……」

聖族には魔力核は存在しないので魔力酔いこそ起きないが、それでも違和感を感じるくらいの魔力密度だった。


「その綺麗な顔や体に傷をつけるのは不本意ですけれど、まあ、すぐに直しますから。」

消え……


「があっ!」

脇腹が短剣によって斬られる。全く見えなかった。


「ここにいる付き人の聖族は全部で4人でしたね。みなさん美しい女性の聖族と聞きました。」

私はすぐに傷を回復させる。ミカエル様の影響で、私も観測聖法を使えないのが仇となってしまった。相手の攻撃を聖法による予測なしで判断するしかない。


「あの、一体どのような手入れをされているのでしょうか?」

この状況に似つかわしくない質問。私の気をひいて油断させようとしているのだろう。私はその質問には答えずに攻撃を仕掛ける。


「セイント……」

「セイントバニッシュルーム」

私の聖法がかき消される。なぜ人間が聖法を使えるの!?


「あなた、まさか勇者……」

「いいえ。勇者ではありませんよ。そしてこれも聖法ではなく、聖法に限りなく似せた魔法。」

聖法に似せる?一体何を言っているのだ!


「魔法は魔力というエネルギーを変換することによって唱えることができます。魔力を火に変換することでファイアーアローを、氷に変換することでアイスロックを……。理論上、魔力を変換させて生成できないエネルギー体は存在しないはずなんです。だから聖力に変換させました。」

言っていることはめちゃくちゃで、何一つ納得はできない。……しかし、現実に聖法が使われたのだから信じざるを得ないのだが。


「ですがやはりあなたのような綺麗な聖力にはならないですね。どうしても聖力に似た何かになってしまいます。まあ、むしろそれでいいのかもしれません。純粋な聖力では勇者でない私には扱うことができませんから。」

魔法構築技術が神がかっているのだ。普通ではない。メイド服を着た金髪の少女が微笑む。


「今負けを認めていただければ、命までは取りませんよ?」

悪魔のようだと思った。人間である身で聖族にこれほどまで啖呵を切ることができるものなのだろうか。今まで出会ってきた人間とはかけ離れすぎていた。

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