極東編:極東1
極東へ到着した。長い海の旅というわけではなかったが、思ったよりも疲れた気がする。その疲れを癒すためにも極東の港へと降り立ったわけだが……すごい、別世界みたいだ。
「これが極東……」
家の作り、来ている服などのすべてが一風変わっていた。その中でも特に目を引いたのは、鎧?のようなものを着て歩いている人だ。腰には剣……とは少し違うものが下げられている。さらには分厚い闘気を体にまとっていた。
「強いね。」
「そうだね。」
オリビアちゃんとレイリンちゃんがそのような会話をしていた。確かにあの闘気密度はちょっとやそっとで身に着けられるものではない。戦うとなれば一対一でも負けることはないだろうが、多少なりともダメージは追ってしまうだろう。不要な戦いは避けるべきだ。
確かに珍しいものだらけだが、港には人が大勢いるし、魔力も不安定というわけではなかった。いたって問題はないように思える。
「とりあえず、話を聞きながら宿を探そう。」
そういって私たちはこの極東を歩き始めた。
「すみません。宿を探しているのですが。」
「お、珍しいね。異国の人間かい。」
道を歩いている女性の方に声をかけた。なぜ私たちが外から来たということがばれたのかと思ったが、確かに来ている服や顔だちも少し違う。案外簡単にわかるものなのだろう。
「はい、さっき到着しました。」
「まさかあんたたち黒海を通ってきたんじゃないだろうね!?」
「そう……ですが。」
とても驚いた表情で聞いてきた。確かに私達のような子供が黒海を渡るというのはどう考えても異常だ。
「今の黒海は異常なんだよ」
「異常……とは?」
私たちが子供だということだけに驚いているわけではないようだ。黒海がいつもと違うらしい。
「理由は分からないけど、魔物が大量に発生しているらしいね。」
「確かに、そうでしたね。たくさんいました。」
「本当にあそこを通ってきたのかい……」
ふむ……一般人は魔物大量発生の理由を知らないと。ということは情報を知ってそうな……偉い人、例えば王様とかに聞くのが手っ取り早いかもしれない。でも極東に王様はいるのかはわからないが。
「私たちはその問題を解決するために来ました。あの、もっと詳しく知りたいので、他にそのことについて知っている方はいらっしゃいますか?」
「まあ……分からなくはないけど、いったいあんたたちは……」
確かに見ず知らずの人に話すよりは、私たちのことを知ってもらった方が話しやすいだろう。
「申し遅れました。私はグルンレイドのメイド、クレアと申します。」
「レイリンと申します。」
「オリビアと申します。」
三人で頭を下げる。
「グ、グルンレイドの!?」
おー、こっちでも私たちの名前は知られているようだった。私達の素性を明かすと、さまざまなことを教えてくれた。安い宿、そして極東を統括している存在の話も。
--
「クレア、これからどうするの?」
紹介してもらった宿屋の部屋の中でそのようなことを聞かれる。黒海を見ると何かしらの原因が極東にあるということは分かる、しかしいざ極東に来てみると別に不審なものを観測することはなかった……。
「とりあえずは極東を統括している人のところへ行ってみよう。」
「それは賛成だけど……相手にしてくれるかな?」
レイリンちゃんがそういう。確かに王国でいう『王』に私たちが簡単に話せるわけがない。極東も同じように私達のような存在が簡単に話せるものでもないだろう。
「勝手に侵入して直接話聞いちゃう?」
「それは……さすがにダメでしょ。」
オリビアちゃんからストップがかかってしまう。うーん、どうしようか。
「まあ、どちらにしろ極東の中心にはいかなきゃいけないでしょ。」
「確かにそうだね。」
オリビアちゃんの言う通り、無理やり話を聞くかはおいといて極東の統括者がいる場所に行かなければいけない。
「あの、真面目な話中申し訳ないんだけど……おなかすいた。」
これまたレイリンちゃんの言うとおりである。とりあえず食事にしよう。おなかがすいている状態では、いい考えも思い浮かばないからね。




