華宴:舞踏宴3
「舞踏宴も残すはあと二日!ここまでで残っているのが、
ヴァイオレット・マリー・ローズ
メアリー・マリー・ローズ
アシュリー・マリー・ローズ
スカーレット・マリー・ローズ
ルナ・ローズ
セレーナ・ローズ
リア・ローズ
ビクトリア
この8名です!
この中から明日の出場切符を手にするのは4名となります。」
司会の男性の方が元気よく昨日までの試合の結果を発表する。チーム戦では三位だったので、個人戦ではぜひとも優勝をしたい。
「それでは早速第一回戦、開催いたします。」
司会の言葉とともに試合の準備が始まる。優勝をしたいと意気込んだものの、正直このメンツでは一回戦を勝つことすら難しいだろう。私の他に『ローズ』はルナさんとセレーナさんである。二人ともとても強いし、マリー・ローズたちも言わずもがな強いので勝てる気がしない。まだ見習いだとしてもビクトリアちゃんは別格の強さなので、こちらも脅威である。
「ヴァイオレット・マリー・ローズ!もう片方はリア・ローズです!」
一回戦の相手はヴァイオレットさんだ。勝てる気はしないが全力で挑もう。
魔神化できるようになってから、純粋な魔力に加え、瘴気をも魔法に変換できるようになっていた。もしかしたらメアリーさんの魔力量にも追いつくかなとか考えていたが、この世界には瘴気がほとんどないので魔力密度の上昇は見込めない。会場を魔界にしてくれないかなぁ......。
剣よし、メイド服よし、バッジよし。完璧だ。
ちなみに剣は新調した。今度は壊さない。そのためにも、誰からも負けないような魔力密度を保つ必要がある。
「それでは選手入場!」
よし行こう。
「おっと先に登場したのは、リア・ローズ!華持ちになって初めての大会で6日目に残るという快挙を成し遂げました!」
その説明はちょっと恥ずかしい。そんなにすごいことじゃないと思うんだけどな......。
「次に登場するのはグルンレイド領最強の剣士、ヴァイオレット・マリー・ローズ!」
「リア、君とは久しぶりに剣を交えるな。」
「そうですね。以前は手も足も出ませんでしたが、今回はそうはいきませんよ!」
「それは楽しみだ!」
それでは第一回戦、スタート!そんな掛け声とともに試合が始まった。
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この人に様子見など必要ない。最初から全力だ。
「いきます!」
「これが魔神化か。なかなかカッコいい姿だな!」
この姿になるとツノや尻尾などがはえる。ハーヴェストさんとおそろいなのでちょっと嬉しい。
「華流・一線!」
ありったけの魔力密度で斬りかかる。
「華流・剪定。」
剣が触れた瞬間に全てが拡散される。くっ、やはり押し返される。
「華りゅ......っ!」
次の攻撃を行おうとした時に、すでにヴァイオレットさんの剣先が首筋に迫ってきていた。それを瘴気で牽制する。触れてしまえば、マリー・ローズとて無傷とはいかない。メアリーさんほどの魔力密度があればわからないが。
「厄介だね、それ。」
鋭い瞳がこちらを見据える。震えそうになる足を抑えて、一歩踏み出す。
「華流・黒華かんざし。」
「華流・華かんざし。」
剣先が描き出す曲線はやはり美しかった。二つの剣がふれ、そして弾きかえされる。よく見ると私の剣が、少し刃こぼれを起こしていた。魔力密度は私の方が上。これでも私の方が刃こぼれを起こすということは、剣の当てる方向、角度、強さの問題、言うなれば技量の問題だ。これほどの剣術の差は小手先の魔力密度では埋められない。
「強くなったな、リア。」
「ありがとうこざいます。」
「私も本気で行こう!」
すると、ヴァイオレットさんの魔法防御が解かれていく。まずい!私は瘴気の密度を限界まで高める。
「やっぱり厄介だな、瘴気というものは。」
普通戦闘時には、身体強化、魔法防御、治癒空間の三つを発動している。剣技において重要となってくるのはこの三つの中で、身体強化のみである。よってヴァイオレットさんは他の二つを捨てることで、全ての魔力を身体強化にあてようとしているのだ。これを可能としているのが、最強たる所以である。
「一筋縄ではいかせません!」
そこで瘴気を充満させることで魔法防御に魔力を振らざるをえなくしているというわけだ。だったら私も身体強化のみに魔力を使ったほうがいい、と思うかもしれないが、そんな危険なことはできるはずがない。
魔法防御なしではここのメイドたちの攻撃であれば、一撃でも食らってしまったらその時点でもう致命傷は避けられないだろう。だが、その攻撃を全てあしらうような剣技、そして抜群の戦闘センスがあれば話は別となる。




