華宴:ハル・カシワシロ2
「みなさん、お待ちしておりました。」
手紙に書かれている場所に到着すると、そこにはリアちゃんがまっていた。
「リアちゃん!久しぶり!」
見ない間にちょっと成長した?……妹たちを見ていてわかるが、やはり子供の成長はとても速い。
「お、お久しぶりです。」
ちょっと緊張しているようだ。声が上ずっていた。
「それではこちらへ。」
そういってメインストリートを案内しながらずんずんと進んでいく。……これって。
「ねぇねぇ、エミナさん。」
「そうだね。春ちゃん。」
二人で顔を見合わせる。これは、この景色はまさしく……
「夏祭り……みたいだね。」
唐揚げ、焼きそば、たこ焼き、今まで日本で見てきた祭りとかなり似ている。浴衣を着ている人がいれば完璧だ。
「ユウトさんみて!……泣いてるんですか?」
「ば、ばか!泣いてねぇよ!」
私は今年も夏祭りを見ることはできるが、ユウトさんはそうではない。きっと思うところがあるのだろう。
「すみませんが、華宴への参加は少々お待ちください。メイド長がお礼を言いたいということでしたので、一度屋敷の方へ。」
--
「こちらが私が働いている屋敷です。」
メインストリートを真っすぐ歩くと大きな屋敷にたどり着いた。……でかい。私もファンタージ小説とかよく読むけど、ほんとにそれって感じ。大きな門を通り抜けると整えられた庭が広がっていた。
私が歩いているところは石になっているが、都会の高速道路かな?道幅が広すぎて緊張してくる。
「エミナさん、手と足が同時に前に出ていますよ。」
「あ、あらそう?」
緊張しているのは私だけではないらしい。それもそうだ貴族の屋敷に入ることなど、普通に生活をしていたらそう簡単に経験するものではない。
「それではこちらです。」
引き続きリアちゃんについていく。別に私たちはお礼をされるようなことをしていないんだけどなぁ……。っていうか逆にお礼をしたいまである。リアちゃんは命の恩人といっても過言ではないからね。
「あまり離れないでくださいね。ここの屋敷は広大で入り組んでいますから。」
ははは、そんな子供みたいなことあるわけないじゃん!
--
……迷った。
いや、別にわざと迷ったというわけではない。ちょっとこの屋敷の廊下とか庭とかを見てたら見失ったというか、ごめんなさいというか。ま、まあ何とかなるか。
「いらっしゃいませ。」
「こ、こんにちは。」
廊下を歩いているとメイドさんたちとすれ違う。本物だ……。メイドはかわいいというイメージが強かったが、実際に見てみると美しいという表現が似合う。みんな美人さんだし。
あ、今の人に道を聞けばよかった……。次見かけたメイドさんに聞くことにしよう。そう考えていると一人のメイドさんが部屋から出てきた。
「あ、あの……!」
「はい、どうされ……!」
部屋から出てきたメイドさん、その顔を私は知っている。黒く長い髪。そして吸い込まれそうなほど澄んだ藍色の瞳。
「有紗さん?」
「柏城さん……なの?」
高校時代の同級生と異世界で再会した。字面だけ見るとかなり頭のおかしいことを言っているが、事実なので何とも言えない。
「柏城さん……あなたも……。」
「い、いや私は違うの、なんというか特殊な感じで。」
寝ている間だけこちらの世界にやって来れるというようなことを説明する。有紗さんは私もあっちの世界で死んでしまったと思ったようだがそうではない。しかし私と違って有紗さんはあっちの世界ではすでに亡くなってしまっていた。
「もう二度と会えないと思っていたわ。」
「私もこんな形で会うって思ってもいなかったよ……。」
「いまは何をしているの?」
「見ての通りここで働かせてもらっているわ。」
大きな胸についているバッジが光る。やはり異世界に来ても胸の大きさは健在か……。
「つらく、ないの?」
「私ね、知っていると思うけれど、あっちの世界にいたときは体が弱かったのよ。だけど今はこうして健康でいられる。」
でも一つだけ心残りがあるわね……と付け加える。
「心残り?」
「私、持病で倒れる前にある人に嘘をついてしまったのよ。それを謝りたいと思って。」
あの高校生時代を思い出しているかのように遠くを見つめる。
「私が、伝えようか?」
「いいのよ。柏城さんには申し訳ないわ。それに伝えるとしたら自分で伝えたいし。」
まあ実際に私が伝えることになってもただの頭のおかしいヤツと思われるだけだろう。
「もうそろそろ迎えが来る頃よ。」
有紗さんがそういうとこの部屋の扉がノックされる。どうぞ、と有紗さんが言うと扉が開く。
「こんなところにいましたか、ハルさん。」
「リアちゃん……ごめんなさい。」
「いいですよ。次からはしっかりついてきてくださいね。」
見た目中学生くらいの子に怒られる大学生の図。なんとも恥ずかしい場面なのだろう。
「誰にも言わないでね?」
「もう、私達一緒のクラスじゃないでしょ?」
そういって笑っていた。その笑顔はやはりどこか懐かしい。
「それではアリサさん、失礼しました。」
「柏城さん、リア、またね。」
そうして扉が閉まった。
—
「ハルさん、アリサさんと知り合いだったんですか?」
「あーうん。昔ちょっとね。」
昔、ちょっと、親友だっただけだ。




