魔界編:魔王城4
初めて感じる『恐怖』というものに戸惑っていると、急にそばの空間が歪みメイド服を着た人間が出てきた。
「これはどういう状況でしょうか?ご主人様。」
その後に続いて四人の人間が出てくる。こやつやつらもあの恐ろしき人間の仲間なのだろうか。……そのうちの三人は勇者ではないか。
「魔王らしいのだが、私の目が欲しいといってきてな。」
「それは万死に値しますね。」
そういうと、黒髪のメイドが異空間から剣を取り出す。
「っ!」
わしはすぐに体中の魔力障壁をさらに分厚くして、戦闘態勢を取り直す。
「そうだな。こうしよう。」
わしとメイドがにらみ合っている中、唐突に話しはじめる。私の発動した炎はすでに消えていた。
「今からお前は一人の勇者と戦ってもらう。それに勝ったら私はおとなしく帰るとしよう。」
「か、勝手に決めるでない!」
「ほう、ならばこのまま戦いを続けるか?」
魔力密度がどんどん上がっていくのが感じられる。
「ま、待つのじゃ。本当に勇者を倒したらきさまはいなくなるのだな?」
「約束しよう。」
「し、仕方あるまい。その条件をのんでやるのじゃ。」
またしても黒髪のメイドがこちらをにらんでくる。
「生意気な口を……」
「よい。」
「……失礼いたしました。」
そういってメイドが剣をしまい、後ろへと下がっていく。
「アイラ、ディアナ。この戦闘をよく見ていろ。」
三人いる勇者のうち、二人に語り掛ける。
「では、行け!マーク!」
「やっぱ俺ですよねぇぇぇーーー」
魔法によって私の前に一人の男が投げ飛ばされた。
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終わった。いや、終わりが始まった。
俺は勇者だ。もちろん地上の魔物を倒したり、賊をやっつけたりするってのは分かる。勇者が魔王を倒す!というのも、おとぎ話ではよくあることだ。だが、
「いきなりはないだろ!」
「マーク、ご主人様の命令です。従いなさい。」
魔王より恐ろしい存在がこちらをにらんでいては、従うほかないのだ。ボスやメイド長はそこに立っている魔王だって、呼吸をするよりも簡単に消し飛ばしてしまうのかもしれんが、俺は無理だぞ?
あの魔王、見た目こそ幼女だが、強さで言ったら魔界最強だ。グルンレイドのマリーローズとまではいかないまでも、ローズくらいの強さは絶対にある。俺も本気を出さなければ、ただでは済まないだろう。
「ヴィオラ、俺の骨は拾ってくれよ。」
「かしこまりました。」
……おい、もう少し応援してくれてもいいんじゃないか?
それと、魔神化した姿の特徴をヴィオラから聞いたことがある。俺の目にはその特徴にピッタリと重なる姿が見えているのだが。最初から最大出力ってことだよな?普通、最初は様子見があってから徐々に……
「勇者よ、初めまして。そしてさらばじゃ!」
「ちょ!ま、まて!いま考え事を……」
魔王と勇者の戦いが始まってしまった。




