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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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魔界編:魔物の町4

「メイド長、そろそろ町へ到着します。」

「わかりました。馬車のまま町へ入ることは可能ですか?」

「はい、問題ありません。」

もうすぐアルマデスという町に到着するので、メイド長へと報告を行う。ちなみに勇者たちが向かった町とは違う町である。


違う町にいくのならば偵察をさせる意味があるのだろうか。そもそも魔界についてある程度知っている私がいるというのに勇者たちを先に行かせ偵察する理由がわからない。


さらにご主人様とメイド長は以前にも魔界に来たことがあるらしい。だったらなおさら偵察の必要はないのではないか?いや、ご主人様のことだ、念には念を入れてのことに違いない。


アルマデスというのは魔界でもかなり大きな町である。いたるところに店が開かれており、売り手買い手がひしめいている商業系の町といえる。特に食、ファッションは魔界でも最先端を言っており、多くの観光者でにぎわっている。


「もうすぐ町へ入ります。隠ぺい魔法などはどういたしましょう?」

魔界で人間であることがばれると、大混乱になりかねない。人間界で魔物が恐れられているように、ここでは人間が恐れられている。その理由は簡単だ。魔界で生きていられる人間が弱いはずないのだ。


「メアリー、隠ぺい魔法をお願いします。」

「かしこまりました。」

ひさびさに仕事がふられたので、かなりうれしそうである。私以外に隠ぺい魔法がかけられる。特に体に変化はないが、外部からは魔物のように見えるようになった。


「メアリー、魔物ではなく魔族に見えるようにお願いします。」

「はい、かしこまりました。」

するとメアリーさんは私の体をじっくりとみる。……うっ、なんだか恥ずかしい。すると再び魔法が展開される。


確かに魔物よりも魔族として見られた方が魔界においては何かと都合がいいことが多い。基本的に魔物は魔界で生きてられる人間に勝つことはできない。しかしそれらの人間に勝つことができる存在が魔族なのだ。いうなれば魔界の英雄ということだ。魔物からの印象はかなりいい。


「町へ入ります。」

広がるのは懐かしい街並みだった。人間界に迷い込んでしまう前は、幾度となくこの町を訪れた記憶がある。


「あ、魔族様だ!」

ゴブリンの女の子が叫ぶと、周囲の視線がこちらへ集まる。馬車を引いて町を進むだけでも珍しいのだが、その御者が魔族ともなるとばれずに進むというほうが無理だろう。


たちまち周囲に魔物たちが集まり手を振る。こちらもそれに振り返すと歓声が上がっていく。

……恥ずかしい。


「とりあえず宿へ向かってください。」

「かしこまりました。」

この街で一番の宿といえば……アルデバランだろう。


人間界のように『魔貴族しか泊まることができない』という決まりはないが、あまりにも宿泊金が高すぎて普通の魔物や魔族は宿泊できない。


「ハーヴェスト、魔物がしゃべってる……。」

「そうですね。」

私にとっては当たり前のことだが、メアリー様……だけでなく普通の人にとっては驚くべきことなのだろう。魔界にいる魔物と人間界にいる魔物は全く別物といっても過言ではない。ここにいる魔物はまぎれもなく生命体だが、人間界に湧き出る魔物は瘴気によって具現化された悪の塊である。そこに意思なく、ただ欲望のままに殺戮を繰り返すものだ。


ごくまれに私のように魔界から人間界に紛れ込む魔物も存在している。

それらは意思持ちの魔物といわれている。


「なんか、人間みたい。」

「人間も魔物もそんなに大きな違いはないと思います。」

こうしてみていると、人間も魔物も心を通わせ信頼を築きあって生きている。いつかは二つの世界が混ざりあって共に過ごすことができる日が来るのかもしれない。


そんなことは万に一つもなしえないような難しいことなのだが、グルンレイドのメイドとして生きているとご主人様であれば可能かもしれないと思ってしまう。


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