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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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魔界編:魔物の町3

「これからどういたしますか?」

メイド長がご主人様にそう聞く。勇者たちと別れてから私が召喚した魔獣に馬車を引かせ、魔界を進んでいる。私にとってはここが故郷なので、この景色が少し懐かしく感じた。


「焦っても仕方がない、ゆっくりと着実に進んでいく。それと当分の計画はお前に任せる。」

「かしこまりました。」

メイド長が頭を下げる。ちなみに魔獣は召喚したとして、馬車はどこから出てきたかというと、メアリー様の超級第二位魔法、無限空間の中から出されたものだ。


「ハーヴェスト、お前の急ぎたい気持ちにこたえられなくて悪いと思っている。」

「そ、そんな、滅相もございません。すべてはご主人様の思うままに!」

急にそんな慈悲深い言葉を投げかけられ、慌てて頭を下げる。きっとご主人様には崇高なるお考えがあるから、このようにゆっくりと進んでいるのだろう。


「ハーヴェスト、このまま一番近い町に向かってください。」

「はい、かしこまりました。」

進路はメイド長が決めることになったので、当分はこの方の指示に従い魔獣を操作する作業となるだろう。


「イザベラ様?私は何をすればよろしいのでしょうか?」

メアリーさんがそういう。彼女はメイド長がメイド長になる前からここのメイドだったらしい。それもあってか、『メイド長』という呼び方ではなく『イザベラ様』と呼んでいる。見た目はかなり幼く、アイラやディアナと同じくらいの年齢に思える。が、実際は私よりも年上だろう。


「あなたは戦闘の時に役に立ってもらいます。今はゆっくりしていて問題ありません。」

そういわれると、ちょっとしょんぼりしたような表情になる。かわいい……。本当に年上なのだろうか。


「ハーヴェスト……暇。」

「一緒に魔獣の操作をいたしましょうか。」

「うん。」


そういって二人で馬車の操縦席の方へ移動する。こう見るとただの小さな女の子だが、毎年開かれる『舞踏宴』でその実力はメイドたちみんなが知っている。


これは華持ちだけでなく、見習いなどのすべてを含めたメイドが参加可能な舞踏大会だ。自由参加だが、トーナメント戦やチーム戦でよい成績を収めたものには商品があるので、多くのものが参加している。もちろんその戦闘は平民や貴族などの多くの人が観戦する。


 グルンレイド領の力を知らしめるのと同時に、異世界の知識により作られる様々な製品の販売を行っている。名のある商人がこぞって集まり、多くの商品を仕入れている姿をよく見かける。その他にも、大量購入ができない平民向けに簡易的な店を設置し、数個単位で購入できるような仕組みも作っていた。


「メアリーさんは、舞踏宴で優勝したことがありますか?」

唐突だが気になったので聞いてみることにした。


「ない。イザベラ様に勝てない。」

「ですが、数年前からメイド長の参加はなくなりましたよね。」

毎年メイド長が優勝するので、数年前からご主人様の命令によりメイド長の参加がなくなっていた。本人は少し残念そうな顔をしていたが、他のメイドたちは(失礼だが)かなり喜んでいた。


「でもほかのマリー・ローズに負ける。」

「確かにアシュリーさんやヴァイオレットさんがいますね……。」

グルンレイドのメイドの中で最も魔力密度の高いメアリーさんでも優勝できないというのは、やはりこの大会は一筋縄ではいかないらしい。ちなみに私は本選まではなんとか行けるものの、一回戦を勝てたらいい方である。


「ハーヴェストもいい魔力密度だと思う。私はその魔力好き。」

「あ、ありがとうございます。」

唐突にほめられたので顔が赤くなるのを感じる。人間界に迷い込んでしまい、『悪い魔力』だとさげすまれてきた私にとって、その魔力を好きだといってくれる存在はとてもうれしいものだった。


「ご主人様もそう考えてる。」

人間界で逃げ回る生活を送ってきた私を最初に認めてくれた方が私のご主人様である。人間、魔族、聖族、龍族などの種族による差別をせず、すべて平等に扱うその姿をみてこの方に使えることを決めた。基本的に魔族の習性として、自分より強い存在にしか従わないというのもある。


「あの、メアリーさんはどのようにしてご主人様と出会ったのですか?」

これもまた唐突だが、気になったので聞いてみることにした。


「私もハーヴェストとおんなじ感じ。私の魔力密度が濃すぎて、魔族のようだといわれ、迫害された。」

メアリー様は貴族出身で当時は魔法について様々な教育を受けていたらしい。しかし、メアリー様の濃すぎる魔力密度は周囲から恐れられ、使うことを禁じられていたらしい。


「でも私は我慢できなかった。だって魔法使うの好きだもん。」

そのような理由で使い続けていたら、さらにうわさが広まり家を出ざるを得ない状況になってしまったということだった。


「ということは貴族奴隷……というわけではないということですね。」

「そう。肩書的には一応貴族って感じ。ハーヴェストも奴隷商で買われたというわけではないんでしょ。」

「そうですね。私は魔族なので、貴族とか平民とか奴隷というものに当てはまりません。」

基本的にご主人様は奴隷商から購入してくることが多い。そのため、ほとんどのメイドは肩書的には奴隷という場合がほとんどである。だからといって、何か扱いが変わるかといえばそうではないが。


--


「……そういえば魔界は瘴気にあふれていますが、メアリーさんは大丈夫なのですか?」

私は魔族なので問題はないが、人間であるメアリーさんは違う。

「結界を張ってるから大丈夫。それと、私くらいの魔力密度だと魔界の瘴気が入ったくらいじゃ特に変化ない。」

人体に影響を与える瘴気の量は、体内にある魔力の十パーセントといわれている。それを超えると、悪魔付きになる確率が跳ね上がる。普通の魔法士ならば数分もいれば簡単に許容範囲を超えてしまうが、メアリー様は一日結界を張らないで過ごしたとしても、ほとんど変化がないのかもしれない。


「だからといって結界は解かないでくださいね?」

「うん。分かってる。」

一日でもほんの数パーセントしか瘴気が蓄積しないとしても、たまることにはたまっている。いつかは限界値まで来てしまう。やはり人間である以上、結界を常に張り続けなければいけないということには変わりない。

ただ人間でも例外はあり、勇者たちは瘴気に対する完全耐性があるので問題はないようだ。

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