王国編:南門5 剣聖シャルロッテ
私の支配下に置けない魔力密度なら、それを上回るほどの闘気で切ればいい。
「バルザ流奥義・」
私は体中の闘気をこの聖剣を集める。
「天切り!」
空間ごと吸血鬼を切り裂こうと、剣をふるう。
『開華』
「きゃっ!」
突然吸血鬼がまとっていた魔力が解放され、その風圧に押し戻される。そして私は地面から、飛んでいる吸血鬼を見上げる。
「……なんですか、これは。」
空間を満たしていた私の闘気は、縮小してしまい、今や私から半径一メートルの中にしか満ちていない。
『“ワールドオブブラッド”』
……空が紅い。私の覚醒を解いてしまったら、すぐにこの高密度の魔力の世界に放り出され、意識を失ってしまうだろう。
「おーっほっほっほ!自分以外の覚醒を見るのは初めて?」
確かに初めて見るが、取り乱している時間はない。まずはこの世界の効果を調べる必要がある。
「華流・」
巨大な鎌が、私の頭上に現れる。……まずい!
「周断」
シュッ、という音とともに、私の意識が飛びかける。気づいたら私は空中を飛んでいた。そして周辺の家の壁に激突する。
「かはっ!」
肺の空気がすべて抜ける。少しでも気を抜くと、意識が飛んでいきそうだ。しかし幸いなことに闘気のおかげで、体を切断されることはなかった。早く……立たなければ。
「バルザ流・」
「黒鎌血華術・斬撃」
再び吹き飛ばされる。今度はしっかりと切られた感覚があった。血が流れているかどうかは、わからない。もう、立っていることで、精いっぱいだ。しかし、無意識のうちに、剣を構える。
「バル、ザ……」
「黒鎌血華術・慟哭」
視界が宙を舞う。あれ……?なんで私の体が後ろに?その体は、首から上がなく、真っ赤な血が流れていた。
「……う、ぁ」
「安心して、あなたが死ぬことはないわ。ちょっと眠ってもらうだけ。それと、一口分の血を頂戴ね。」
消えゆく意識の中で、そのような声がこだまする。視界はすでに真っ黒くなっていて何も見えない。
首を切られて、死ぬことがない……わけがない。だけど、王国を守ることができなかった私に存在意義などない。ここで死ぬのも……悪くないかもしれない。そう思いながら、私の意識は途切れた。
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「覚醒を使えるとは驚いたわ。」
そうつぶやきながら、彼女の首を体にくっつける……前に、このおいしそうな血を味見してしまおう。
ペロッ
「おいしいわね!」
そうして私はごくごくと勢いよく血を飲み……
「何をしているの?」
「うひゃっ!」
その声がしたほうを恐る恐る振り向くと、そこにはジロリとこちらを睨んでいるメアリーさんが立っていた。
「な、何にもしてないです!」
「じゃああなたの綺麗なお口をもっとよく見せて。」
今の私の口の周りにはこの子の血がべっとりとついていた。
「……早く治して。」
「は、はい!エクストラヒール!」
そういって私はすぐに回復魔法をかける。首と体がきれいにつながる。体に傷は一つとして残っていないが、精神的な疲労は取り除いていないためまだ目を覚ますことはないだろう。死を覚悟するほどの攻撃だから、目が覚めるとしても普通よりもかなり遅いはずだ。
「早くカルメラのところに戻って。」
「はい、すぐに!」
私よりも体が小さいというのに、その目で睨まれてしまうと身がくすんでしまう。メアリーさんも逆らってはいけない人の一人だ。
というか、グルンレイドのメイドの中私が逆らえる人にいる?私のパーティは北門を襲撃するという手はずだったので、私は北門へ向かう。戻ったら戻ったで、カルメラさんに怒られるんだろうな……。そう思いながら私はとんだ。




