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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:イリス5

ご主人様とイザベラ様が移動を始めると、私はすぐに次の行動を考える。


「2人ずつに別れて行動するわ。どうかしら。」

「賛成です。」

ヴァイオレットは即答する。


「私は……各々で1体の敵を倒した方が早いと思う。」

ステラは私の目を見て、というよりは呟くようにそう告げる。


「私は4人でまとまって行動した方がいいと思います。が、ご主人様が『まとまって行動する必要はない』と言っている以上、私たちが到底叶わない相手ではないということがわかります。場合によっては2人ずつ、または各々で行動するのも問題はないかと……。」

ミクトラのその言葉にステラは驚いたような、感心したような表情を見せる。と言っても私にしかわからないくらい微々たるものだったけれど。


「わかったわ。とりあえずは4人で行動して、必要であれば別れて行動するという形をとるということでいいかしら?」

そういうと3人は頭を下げた。


私たちの目的は敵の排除。ご主人様の跡を追っていくのでは意味がないということで、私は観測魔法を広範囲に広げて敵の位置を把握する。


「かなり大きエネルギーが5つ……。そのうちの1つはかなり近いところにあるわ。」

敵か味方はわからないがとりあえず接触してみることにする。私たちは浮遊魔法を使用し、その方向へと飛んでいった。


ーー


「あら?珍しいお客さんだこと。」

隠蔽魔法を使用しながら接近したにもかかわらず、すぐに私たちの存在がばれてしまった。わたしたちを舐めるように見ているのは金髪のウェーブがかった聖族だった。溢れ出る勢力の量から考えるにただの聖族というわけではない気がする。


「あなたは……私たちの敵かしら?」

「その質問には答えられないわ。あなたたちがどちらの味方かによって変わってくるんだもの。」

「質問を変えるわ。これをやったのはあなた?」

私は周囲を見渡す。建造物は破壊され、さらには血を流して地面に倒れている聖族が無数に転がっていた。


「えぇ、そうよ。」

その聖族は笑っていた。


「仲間……ではないのかしら。」

「同じ種族というだけよ。驚くことでもないでしょう?あなたたち人間族だって争い合っているじゃない。」

確かに彼女には彼女の正義があるのだろう。だがしかし、これではあまりに一方的すぎるのではないか?周囲に転がっている聖族たちからはそれほど強い力を感じない。四天王の座を狙っているのなら、現四天王のみに焦点を当てて力のない聖族は無視してもよかったはずだ。


「争いと虐殺は違うわ。これ以上罪のない聖族と天界を壊さないで。」

私がそう言った次の瞬間、彼女はゆっくりと剣を取り出した。


「お下がりください。」

ヴァイオレットが私の前に出る。


「私の名前はヨルム。新たな四天王としてこの場所に君臨するものよ。そしてそれを阻むものは排除しなければならない。」

私たちが止めようとしている相手の1人……。


「面白いものね。メイドがメイドを守るだなんて。」

彼女は止まる様子もなく、こちらを向き剣を構える。


「……あなたの答えはそれでいいのね。」

言葉で言って止まらないとすれば、力で止めるしかない。


「じゃあね。人間さん。ここまできたことは褒めてあげるわ。」

ものすごい速さで私たちの面前まで飛んできて、聖力がまとわれた剣が振るわれる。


「華流・剪定」

ヴァイオレットの剣が空中に弧を描き、彼女の剣に触れると纏われていたエネルギーの全てが消失した。


「っ……!」

そこで初めて驚いたような表情を浮かべる。


「……本当に面白い人間ね。」

表情が真剣なものになり、わたしたちを“敵“と認識し始めたということがわかる。今の所まだ相手の強さを正確に判断することはできない。まとまって相手をした方がいいだろう。


「シド流……」

「華流・周断」

攻撃しようとしていたヨルムをステラの剣が止める。


「硬い……。」

ステラは切断するつもりで剣を振るったようだが、聖法障壁が想像以上のものだったのか手首で止められていた。


「本当に驚いたわ。これほどまでに力を持った人間がいるなんて。」

ヨルムは2人を見ながらそういった。


「このまま戦ってもいいけれど、このレベルの人間が4人……私も多少だけど傷を負ってしまいそうね。」

そういうと徐々にヨルムの周りに聖力が集まってくる。魔法の種類に関してはグルンレイドの屋敷でも習っているので多少はわかるが、聖法に関しては全くわからない。だが、なんだこの聖力の流れは……どこかで見たことがあるような……っ!


「ステラ、ヴァイオレット!下がりなさい!」

「は、はい!」

即座に2人が行動を起こしたが、


「遅いわ。」

空間が歪んだ。やはり時空間聖法!ヨグ・ソトースを唱えた時の魔力の流れに酷似していたからもしかしたらと思ったが……。2人はその歪みに飲み込まれてしまった。


「ヴァイオレット、ステラ!」

ミクトラはすぐにその歪みの方へと飛んでいったが、間に合わずに元の空間へと戻ってしまう。


「っ……あの2人をどこへやったのよ!」

「教えないわ。」

ミクトラがそういうが、答える様子はないようだ。一番問題なのは、混沌へと2人が投げ出された場合だ。2人は時空間魔法を使用できないので、その世界から戻る方法がない。魔法障壁さえ展開していれば混沌では死ぬことはないが、時間の流れが不規則だ。この世界での1秒があっちの世界での一年という可能性もなくはない……。


「ミクトラ、あの2人の居場所がわかるかしら?」

「申し訳ありません……私の観測魔法では……。」

この場にアシュリーがいないのが悔やまれる。彼女であれば空間が一つや二つ違ったとしても、その居場所を特定することは容易いだろう。

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