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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:ステラ1

「スカーレット様、何者かがグルンレイド領内へ侵入しました。」

そういってくるのは魔法障壁や観測魔法の扱いもお手のものとなったメアリー。行商人や冒険者なども行き来しているのにも関わらずそう報告してくるのは、普通ではない存在なのだろう。


「誰かしら?」

「すみません私の観測魔法では強大な魔力としかわかりません……。」

「そう。」

私はすぐにアシュリーにメッセージを飛ばす。


『アシュリー急に悪いんだけど、グルンレイド領内に危険な存在がないか観測してくれる?』

『はい、かしこまりました。』

観測魔法の観点から見れば、メアリーよりもアシュリーの方が優れている。しかし魔力密度の問題で“常に領内全域をカバーするような観測魔法“を展開し続けることはできないのだ。それを可能とするのがメアリーの圧倒的な魔力密度ということで、日頃の観測は全てメアリーにお願いしている。


『グルンレイド領南部に強大な魔力を観測しました。……人です。ものすごいスピードでここへ向かっています!』

『……ヴァイオレットを連れて出迎えて。私もすぐにいくわ。』

『かしこまりました。』


「どう、でしたか?」

「まだわからないわ。でも敵の可能性も十分にあり得る。」

私はイザベラ様にメッセージを送った。



「一体誰なのだ?人間か?」

「うーん、人間だと思うけどこの魔力密度は人間とは思えないんだよね。」

ご主人様やメアリーに比べればかなり薄いのだが、それでも私やヴァイオレットよりは断然濃い。イザベラ様と同じくらい……?


私たちはグルンレイドの屋敷の屋根の上に立って、南の方角を見つめる。ヴァイオレットがいるから大丈夫だと思うが、あまりの観測されるエネルギーの強さに動揺を隠せない。


「来るっ!」

そいつのスピードは落ちる気配がない!?このままでは屋敷が破壊されてしまう。


「華流・剪定!」

ヴァイオレットがそいつめがけて剣を振り下ろす。


「……邪魔。」

「がはっ……!」

剣を受け止めエネルギーは消失したが、そいつが繰り出した一撃でヴァイオレットは地面へ叩きつけられた。


砂埃が晴れ、少しずつその姿が露わになる。私と同じか少し年下くらいの人間の女……水色の髪が印象的だった。


「私はアシュリー。あんたは?」

「……ステラ。」


「何しにここへ?」

「グルンレイド辺境伯を殺すため。」

「……その言葉がここではどれほどの罪になるか知ってる?」


「どいて。お前も殺すよ。」

「あんま調子に乗らない方がいいよ。クソガキ。」

ステラは地面を蹴り上げ私の首筋目掛けて剣を振るう。が、私はそれを観測しすぐに避ける。


「華流・花かんざし」

避けた瞬間に短剣を取り出し、ステラの腹部めがけて切り掛かる。


「……。」

無言で私の剣を受け止められる。魔力を流し込んだつもりが分厚い魔法障壁によって堰き止められていた。こいつ、強い。


「はぁぁぁ!華流・一刀!」

「バルザ流・断頭」

地面を破壊しながら斬りかかるヴァイオレットの一撃をまたもや剣で受け止める。


「本当に邪魔。バルザ流・」

ステラの剣にまとわりついている魔力がさらに濃く、鋭く尖っていく。


「エアヴェール!」

私はヴァイオレットに対して空気の層を展開するが、


「心斬り」

「っ……!?」

それらが切り裂かれ、ヴァイオレットの体に傷が入る。


「ヒール!」

私は距離をとりながらヴァイオレットを回復させる。致命傷とまではいかなかったが、こうも簡単に私たちに傷をつけることができる存在に警戒心を強める。


「バルザ流・雷鳥」

「かはっ……!」

私にきりかかってくることは観測できたはずなのに反応できなかった。私の魔法障壁は紙のように切り裂かれてしまう。


「バルザ流・」

「させない!」

ヴァイオレットがステラを吹き飛ばす。


「やっぱり赤髪から。バルザ流奥義・」

闘気……それに魔力が混じりあっていく。バルザ流だというのに魔力をまとった攻撃……。


「翡翠」

「超硬化!……っ!」

「ヴァイオレット!」

私は思わず叫んでしまう。ヴァイオレットの右腕が切断され、地面に落ちたのだ!


「うろたえるな!私は大丈夫だ!」

切断された部分をおさえながらもヴァイオレットはステラから目を逸らすことはなかった。っ、どうする!最優先はヴァイオレットの治療だ。後遺症が残ってしまったら目も当てられない。私は呼吸を整える。


「アイスロック」

氷がステラを包み込むが、すぐにヒビが割れ破壊されてしまう。まだ、魔力密度が足りない。もっと私の中の魔力をかき集めろ……。


「その程度……」

「アイスロック・絶唱」

時とともにステラを凍結させた。……できた、これが絶唱。しかし私の絶唱は不完全だ。ステラ相手には数十秒もてばいい方だろう。その間に回復を……。


「一体これはどういう状況?」

「スカーレット様!」


「ヴァイオレットの腕が切断されました。そこで固まっているステラという人間に……。」

「そう、見せて。」

「は、はい!」

ヴァイオレットはすぐにスカーレット様に腕を見せる。


「綺麗な太刀筋ね。これなら綺麗に治せるわ。エクストラヒール」

すると切断された腕が融解し、ヴァイオレットの腕へとくっつき始める。しばらくすると切断された部分がわからないほど完璧に治癒されていた。


「ステラ……かなり危険ね。あなたたちはご主人様の元へ向かいなさない。」

スカーレット様が剣を抜き始める。協力したいと言いたかったが、今の私たちの実力ではこのステラという存在に負けることはないと思うが、勝利を収めるのは難しいだろう。


「かしこまりました。」

私とヴァイオレットは頭を下げ、ご主人様のいる部屋へと向かった。

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