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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:コトアル4

「群れのボスがやられたという事実を認識しているんだもの。」

さっきまで獰猛だったネズミたちがスカーレット様をみると後退りをし、距離を取ろうとしていた。


「あなたたちもこうなりたくなかったら、私たちに攻撃しないことね。」

そう言ってドサッと持っていたネズミを地面に投げ捨てる。


「か、かっこいい……」

ヴァイオレットはそれを見て目を輝かせていた。


私たちが大人しくなったネズミの群れのそばを通り過ぎると、その先には入り組んだ迷宮が広がっていた。このネズミたちが掘ったのだろうか?


「あちこちに穴があるわね。アシュリー大丈夫かしら?」

「任せてください。やってみます。」

私は全力で観測魔法を唱える。微弱な魔力や瘴気を観測しろ……。するとこのダンジョンはとても広大だということがわかった。私が想定していた数十倍広い……。


ん?私はたった一つ違和感のある部分を見つけた。この洞窟にしてはその部分は四角形に近く形が整えられていたし、何より不思議なことにここより瘴気が薄い。というか存在していない?私はそこを目指すように進んでいくことに決める。


『さっきの赤いネズミの危険度はA+というところね。』

『確かに危険度Aでは私たちの隠蔽魔法を見破ることができなと思いますし。』

再び隠蔽魔法を使用していどうしているが、今の所私たちの存在がバレるという事態には陥っていない。やはりあの赤いネズミが特殊だったのだ。今後もそのような存在がいないとも限らないので、いっそう注意して進まなければ。


と言っても注意すれば特に大変なこともないようで、危険度A+の魔物に気づかれてしまったとしてもヴァイオレットが速やかに討伐してくれた。


『もうすぐ目的の場所へ到着します。』

長い洞窟探索の末、なんとか目的の場所まで到着できた。


『天界の門と同じような形の物体を観測しました!』

『よくやったわ。この先の空間ね。』

そう言ってゆっくりと先へと進んでいくと、広い空間にたどり着いた。


『真っ暗だな。光魔法を使用しても大丈夫か?』

『多少危険だけど。ここには生命反応がないから大丈夫だと思う。……どうでしょうかスカーレット様。』

『いいわ。使いなさい。』

そう言われるとヴァイオレットは光魔法を唱える。


『何、ここ……』

『広いわね……』

明かりが周囲を照らすと、そこには天然物とは思えないような光景が広がっていた。


『壁に彫刻?そのほかにも至る所に金属片が散らばっているな。』

私の知っているような金属片ではなく、複雑に加工され小さな部品のような物だった。こんなに小さなものを作るには一体どれほど緻密な魔法制御が必要になるのだろうか……。


『私でもこれほど小さく金属を加工することはできないわね……』

スカーレット様がそう言っていた。ここには私たちの想像を絶するような強者が存在していた……?そして散らばっている金属片の奥、この部屋の中心に巨大な門が立っていた。


『やった!これだな!』

『よかった……見つかった。』

私も魔界の門らしきものを見つけられて一安心だ。私の観測魔法も日々強化されているとはいえ、確実ではないので無駄足になってしまわないかとかなりヒヤヒヤした。


『それじゃあグルンレイド領へ帰り……』

その瞬間


ピ、ピー、ピ


という音が鳴った。


「光エネルギーヲ感知シマシタ……」

人間の声とは思えないような声が聞こえた。


「っ!」

私たちは周辺を見渡すが、ガラクタばかりでよくわからない。


『気をつけて!』

『はい。』


「コードネーム000……起動シマス。」

ガシャンという音とともに近くの瓦礫が崩れ落ちた。その中から……見たこともない存在が現れる。


「何っ!?」

金属のような物質でできた肌、そこをゆっくりと流れる光……私はその生物とは思えないような外見に驚き、声をだしてしまう。


「生体反応ヲ確認。攻撃ヲ開始シマス。」

その瞬間謎の存在が消え……


「かはっ……!」

腹部に激痛が走った。そして私は壁まで吹き飛ばされる。魔力反応は一切ない。さらに魔法障壁を展開しているにもかかわらずかなりのダメージが入ってしまった。


「アシュリー!くっ!」

ヴァイオレットにも攻撃を行うがそれを間一髪のところでかわす。


「ヴァイオレットは敵の注意を引きなさい!アシュリーはその他の敵がいないか索敵して!」

「「かしこまりました。」」

スカーレット様の指示に従い、私は周囲を確認する。しかし他の敵どころか、目の前で動いている謎の存在すら感知できなかった。魔力が全くない!?


「超加速・エレキレールガン」

「華流・剪定っがぁぁぁっ!」

ヴァイオレットは剣で光線を受け止めているが吹き飛ばされる。


「エクストラヒール!」

腕が焼けているヴァイオレットを私はすぐに回復させる。龍族の耐久力であれだったら、私だったら溶けてるかも……。私は攻撃に魔力を使うよりも防御に全力で注ぐことにした。


「エレクトロ……」

「華流・周断」

ガンという音とともに謎の存在は体勢を崩すが、体には傷がついている様子はない。スカーレット様の攻撃でもダメージを与えられない……。


「硬いわね。」

が、スカーレット様は特に気にしてはいないようだった。再び剣を構え直し、魔力を練り上げる。


「エレクトロ・ストライク」

「っ……華流奥義」

スカーレット様……!うまく攻撃をかわしたようだが、頬を掠めてしまったようで血が流れていた。しかしその右手に持っている剣には膨大で緻密な魔力がまとわりついていた。


「轟一線」

ガシャンという音とともに腕で受け止められるが、そのままスカーレット様は剣をひく。その緻密な魔力は何よりも鋭く尖り、切断することに長けた技へと変貌する。


「……一部損傷、修復シマス。」

切断することはできなかったが、腕と思われる部分に傷が入る。


「治るのね。」

金属の一部が融解し傷を塞ぎ、元通りになる。一体この生き物?はなんなのだ……。得体の知れない存在に私とヴァイオレットはどう攻撃していけばいいのか戸惑っていた。


「二人とも、私が合図したら私の方に飛んできなさい。」

「「はい!」」

その意図はわからないが、私たちはスカーレット様の考えに従う。


「華流・花かんざし」

その剣を腕で止められる。スカーレット様の魔力が流れ込んだようだが、相手に変化は全くなかった。


「超加速……」

「フラッシュ」

っ!突然の光に私は周囲が見えなくなってしまう。おそらくヴァイオレットもそうだろう。


「来て!」

しかし私には観測魔法がある。眩い光の中でヴァイオレットの手を掴み浮遊魔法を唱え、スカーレット様の方へ向けて飛ぶ。


「超級第三位魔法・ヨグ・ソトース」

そして私たちは時空の歪みに飲み込まれた。

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