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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:コトアル3

予想通りに徐々に洞窟内の魔力密度が上がっていき、弱い魔物が出始めてきた。ゴブリンが数匹現れるが、隠蔽魔法を使っている今、特に戦う必要もないのでそのまま無視して通り過ぎる。


『瘴気も濃くなってきているわ。気を付けて。』

『かしこまりました。』

言葉にしてしまうとせっかく気配を消しているのが無駄になってしまうので、魔法によるメッセージでやり取りをする。


『アシュリー、あとどれくらいかわかるかしら?』

『そうですね。入口からここまでの距離の3倍から4倍先にあると思います。』

『そう、ありがとう。』

平たんではない道を進んでいると平衡感覚が分からなくなってくる。しかし今のところ一本道なので特に迷う要素などないのだが。


『もう少しスピードを上げるわよ。』

スカーレット様がそういうと飛行するスピードが上昇する。そこまで神経質に気を付けているわけではないが、なるべく洞窟内に足跡などの痕跡を残したくないので飛んで進んでいた。


『止まってください。』

ある程度進んだ時、私は少し先に今までよりも強い魔力密度を感じてそう伝えた。


『魔物です。しかし今までと比較してもかなり強い……危険度A程度でしょう。』

私たちにとってはそこまで脅威となるわけではないのだが、この狭い空間で大量の危険度Aの魔物がいたとするとそれは脅威となる。念のためにいったん止まっていただいた。


『数はわかる?』

『一つの大きな魔力の塊が観測されております。その大きさの魔物一匹か、それとも小さな魔物が数十匹まとまっているか……すみません、分かりません。』

『……警戒しながらついてきて。』

ゆっくりと浮遊し、先に進んでいく。そしてその先には……大量のネズミのような魔物たちが見えた。


「っ!」

『しゃべらないで。』

私はあまりのおぞましさに息をのんだヴァイオレットに注意をする。大丈夫、まだばれてない……。しかしそばを通り過ぎようとした瞬間、色の違う一匹が私と目が合った。まずい……。


「キュィィィィ!!!」

そして叫びだす。その声は魔法が付与されているようで私たちの隠蔽魔法が拡散されていく。そして次々に私たちの方に赤色のおぞましい目が向けられる。


「ばれたようね。」

スカーレット様が剣を取り出すのに続いて、私たちも戦闘態勢に入る。この叫び声などが伝わり遠くの魔物をおびき寄せないようにするために、私は周辺に防音魔法を展開する。これで洞窟内に音が響くことはないだろう。


「ヴァイオレットは敵をせん滅、アシュリーはその補佐、私はあの真っ赤なネズミを消してくるわ。」

「はい!」

スカーレット様が消えるように魔物群れに向かっていく。


「スカーレット様の道を、開けろ!華流・一線!」

ヴァイオレットが剣を抜くとたくさんのネズミが斬られ、群れに一本の道ができる。


「キュィ!」

ものすごいスピードでヴァイオレットにネズミがかみつく。


「いっ……たい!」

それを腕力で叩き落とす。ヴァイオレットの魔法障壁も決して弱くなはい。しかし腕からは血を流していた。あの牙は魔法が付与されているようで私たちにダメージを与えうるものだった。


「ヴァイオレット、あまり進みすぎないで。ヒール!」

「わかっている!」

私はヴァイオレットの傷をすぐに回復させ、念のために解毒もしておく。龍族であるヴァイオレットに状態異常は効きにくいのだが、だからといってやらないというわけにはいかない。


「キュキュ!」

「くっ!」

私は何とかネズミたちの攻撃をよけつつ攻撃をしているのだが、一向に数が減る気配がない。


「華流・周断!」

ヴァイオレットの攻撃に数十匹のネズミが切断される。が、その死体を踏み台にして次々にとびかかってくる。


「っ、きりがないな!」

「ファイアーアロー!」

私は炎の槍を飛ばすが、焼けたのは最前列のネズミだけ。その後ろのネズミは焼けた死体を盾にして身を守っていた。


「もう少し強い魔法で……」

私とヴァイオレットが次の攻撃をしようとしたときに、急にネズミたちの攻撃の雨が止んだ。


「ネズミにしては頭がいいわね。」

そういいながら歩いてやってきたのは、赤いネズミの頭を持ったスカーレット様だった。

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