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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:メアリー1

私は貴族の娘としてこの世に生を受けた。とりわけ高い身分というわけではないが、暮らしに関して言えば何一つ不自由はなかった。


「メアリー、おはよう。今日から魔法のお勉強をするわよ。」

お母さんがそう声をかける。基本的なマナーの勉強、一般的な教養を身につける勉強、そのほかに今日魔法の勉強が増えるようだ。私は日々増えていく“覚えること“に少し嫌だなと感じながら、しかしお母さんを安心させるために頷いた。


「魔法を覚えて、何をするの?」

「えーっと……暮らしが便利になったり、人のために役立てたりできる、かしら?」

私はいつも何かをするときにそのように聞く。純粋に私がこれからすること、覚えることは何のためなのかが気になるのだ。


「わかった。」

ただ、それで心から納得したことなど一度もなかったような気がする。


「メアリーも、もうそんな歳になったのか。」

お父さんがそういう。私の年は10歳。魔法というのは早いうちから始めるほど覚えやすく、また強い魔法も使えるようになるらしい。


「そうねーあっという間ね。」

そして私の頭を撫でる。


「さ、先生が来る前にいろいろ準備をしないとね。」

そういえば朝ご飯もまだ食べていなかった。服も寝る時の服だから着替えなければ。


私は“魔法“とは一体どのような存在なのかを考えながら準備を始めた。



「初めまして、本日よりメアリー様の魔法を教育させていただきます、カレンと申します。」

私はいつもきているふりふりのドレス、というわけではなく動きやすいような服装で話を聞いていた。カレン先生は杖を持ちながら、説明を始める。


「メアリー様、魔法について何か知っていることはありますか?」

「知らない。」

「そ、そうですか。魔法というのはですね、魔力を使用して様々なものを具現化する方法です。」

具現化、という言葉を私は知らなかったがとりあえず頷く。


「では魔力はどこから来るのかと言いますと……ここです。」

カレン先生は自分の左胸に触れる。


「心臓の近くに魔力核というものが存在しております。そこで魔力を生産し体内へ循環させます。実際にやってみますので、ご覧ください。」

……しかしじっくりとカレン先生を見ていたが、特に変わっている様子もなかった。


「おそらく特に変化はなかったと思います。次に観測魔法をメアリー様にかけます。」

次の瞬間ブワーッと感じたことのない感覚がかけ巡る。淡い光がカレン先生から溢れ出ているのが見えた、だけではなく私の肌を撫でるような感覚もあった。これが魔力……!


「どうですか?」

「綺麗……。」

私は思わず感嘆の声をもらしてしまった。肌を撫でるその力が私に順応していく気がした。これだ、これこそが私が初めて感じる“興味“のあること。何よりもその見た目の美しさが私の気持ちを掴んで離さない。


「カレン先生、魔法、どうやって使うの?」

「いきなり魔法を使うことは難しいでしょう。まずは魔力の練り方から覚えていきます。」

観測魔法を使うにも魔力が必要、確かに魔力を練るということは一番初めにやらなければいけないことだろう。


「意識を魔力核……初めのうちは心臓の方がわかりやすいでしょう。に向けます。」

意識を向ける?よくわからないが、私は目を瞑り頭の中で自分の心臓のある部分を想像する。


「難しければ自分の右手で左胸に触れてみてください。」

言われた通りにしてみると、ゾワッという感覚が走った。……何?


「次に先ほど触れた私の魔力と同じようなものを探してみてください。」

そう言われる前に私はすでに“それ“を見つけていた。けど私が知っているものと何かが違う。“それ“はもっとドス黒く、不安定で、不確実な何か。


「それを心臓から身体中を巡らせるように、解き放ってみてください。」

ドクン、と私の血液の中に何かが混ざり合った。一瞬にして“それ“は体の中を駆け巡った。が、止まることを知らない。


「な、メアリー様!?う、嘘……魔力の、暴走!?」

止めようと思って溢れ出てくる私の魔力はこの部屋の全てを満たしてもなおさらに濃くなっていく。


「ば、バニッシュルーム!」

カレン先生は何か魔法を唱えていたようだが、特に変化はなかった。


「カレン先生、これであってる?」

まだ止まらない魔力をよそに、私は先生にそう尋ねる。が、そんなことを答えるのもままならないくらいに慌てた様子だった。


「メアリ様!魔力を、魔力をおさえてください!このままでは……」

と言われても私はまだ魔力を抑える方法を教わっていない。一体どうしたらいいのだ……。


「あの、抑える方法を……」

そう尋ねようとした瞬間、先生がその場に倒れた。

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