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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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リア・ローズ8

『魔撃』


そんな声が聞こえた瞬間、目の前にありえない光景が広がった。どこまでも黒く、圧縮された魔力の塊。まさしく魔神のみが使える魔撃ではないか。


「ありえん。」

さっきまで瀕死だった人間の子供はどこへ行った。周囲を見渡しても見当たらない。


「こちらです。」

声の方向を見ると、二つの魔撃の上、俺と同じ高さまで飛んでいた。無かったはずの腕は再生し鋭い爪が、頭には角が、その黒く染まった瞳は鋭くこちらを見据えていた。


「ば、馬鹿な!その姿は、まるで……魔神ではないか!」

魔神になれるのは魔族だけだ。人間がなれるなんて聞いたことがない。いや、やつは完全な人間というわけではなく、悪魔付きだった。かといってそう簡単に魔神化できるはずがないのだ。


そう思考を巡らせているうちに、二つの魔撃は衝突した。圧倒的なエネルギー同士の衝突で海上の氷は粉々に砕け散る。その破片が宙へ舞い、まるでこの世の崩壊のような情景が広がる。その中でも俺と、目の前にいる”敵”はお互いを見据えていた。


「もうお前を格下とは思わない。」

「それは光栄です。」

そういってぼろぼろのスカートをつまみ、頭を下げる。周囲の景色に合わないそのしぐさは、何度見ても美しいと思ってしまった。


「まいります。」

「こい!」

その瞬間、世界で初めて魔神と魔神の戦いが始まった。


--


「はぁ、はぁ……。」

驚いた、まだ息があるのか。俺はそこに倒れている魔神化した人間を見ながら考える。胸が上下に動いているので、息はしているのだろう。きっともう立ち上がることはできないだろうが。


それにしても、俺の方もかなりぼろぼろだ。魔神化してもなお、これほどのダメージをおうとはこいつの強さは人間族の中でも頂点に立つほどの存在なのだろう。まあ、今になっては人間かどうか怪しいが。魔法の効果が切れかかっているのか、今立っているこの氷も溶け始めていた。さっさととどめを刺すとするか。俺は魔力を集め、放つ。


「メルトスピア」

光のやりがまっすぐ進んでいく。


『華流・剪定』

ガギィンという音とともに、光の矢が消えた。捻じ曲げられた空間から、メイド服を着た人間が現れる。


「……誰だ。」

「お初にお目にかかります。私はグルンレイド家のメイド、カルメラ・ローズと申します。」

そういって頭を下げる。


「私どもの見習いが、だいぶお世話になったようですね。」

氷の上に倒れているメイドを見ながら、そういった。


「この惨状はすべてご主人様に報告させていただきます。」

そういってぼろぼろのメイドを抱き上げる。


「逃がすと思うか?」

「勘違いしないでください。私があなたを見逃すのです。」

「言葉には気を……」

ボトリ、と俺の右腕が落ちた。


「……っ!」

な、何が起きた!何も見えなかった。ただ気づいたら腕が切られていた。


「何をし……」

「時間がありませんので、失礼致します。」

動くことができなかった。これはバインドという魔法だ。しかし、あのメイドは詠唱をしていなかった。……一体どういう仕組みなのだ!そしてメイドは再び時空をゆがめる。


「一つ忠告です。ジラルド様は自分のものを傷つけられると、大変お怒りになられます。それ相応の覚悟をしておいた方がいいかと。」

そういって二人のメイドは時空の歪みに消えていった。俺はただ黙ってそれをみていることしかできなかった。


「っはぁ、はぁ。」

やっと動けるようになり、呼吸ができるようになった。みすみす人類最強の存在を逃がしてしまうとは、俺としたことがミスをしてしまった。これは父に報告をしなければいけないようだな。


それと、あのメイドが帰り際に何か言っていたが、別に気にすることはないだろう。所詮あのメイドを買った人間の貴族が怒るだけだ。人間の貴族とは馬鹿の集まりだと聞く。注意すべきは、あの魔神化したメイドが回復して、再び攻撃を仕掛けてくるときだろう。それと一応さっきのカルメラとかいうメイドも報告しておくか。


そうして俺は一度魔界に戻ることに決めた。

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