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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe  作者: かしわしろ
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過去編:スカーレット3

「貴様が貴族を殺しまわっているという、スカーレットだな?」

目つきの恐ろしい男が声をかけてきた。服装闇につ行けている高級そうなアクセサリーからして貴族だろう。


「えぇ。そうよ。」

私はすぐに魔力を練りはじめる。わざわざ貴族の方から私に殺されに来てくれるなんて手間が省けて助かる。


「多くの貴族がお前を狙っている。」

「あなたもその一人というわけね。けど、貴族ごときに私は殺されない。」

貴族だけではない。王国から私に賞金がかけられたようで盗賊などの勢力からも狙われていた。


「ご主人様に向かってなんという言葉遣いを……」

脇にいるメイドが何かをつぶやきながらこちらをにらみ続けている。貴族に仕えているなんて、とても苦しい思いをしていることだろう。


「少し違うな。私は貴様にお願いをしに来たのだ。」

「命乞いかしら?」

「それも違うな。私に仕える気はないか?」

何をばかなことを。


「断る。」

「だろうな。」

「あなたの方から私に殺されに来たというのには感謝するわ。ファイアーアロー!」

高密度の魔力をその男に向けて飛ばす。するとそばにいたメイドが、前に出てくる。


「あ、危ない!」

思わず声を出してしまう。私は貴族を憎んでいるが、そのほかのものをむやみに殺すようなことはしたくはない!しかし私の予想に反して、そのメイドは倒れることはなかった。


「華流・剪定……ご主人様への無礼は私が許しません。」

メイドの剣が私の魔法に触れた瞬間に炎がかき消された。黒い髪から覗く瞳は、まさしく私を殺そうとしている目だった。このメイド、自ら望んで仕えているというの?


「貴族に使えるなどどうかしているわ!」

「私もご主人様以外の貴族などに仕える気はありませんよ。」

なんだこのメイドは。私の魔法を防ぐということも、貴族に嬉々として仕えているということも、そのどれもがおかしい。


「あなたを傷つけるつもりはないわ。そこをどきなさい。」

「そんなことはできませ……」

「下がれ。」

貴族の男がそういう。


「ですが……。」

「何度も言わせるな。」

「……かしこまりました。」

するといわれたとおりに後ろに下がっていく。


「望み通り、私が相手をしよう。」

よかった。これで無関係の人を傷つけずに目的を達成できる。


「ヒートボ……」

「バニッシュルーム・絶唱。」

……周囲の魔力が消えていく。ヒートボムが発動しない!


「メルトダウン・絶唱。」

「えっ?」

私の顔のすぐわきを高密度のエネルギー体が通り過ぎていった。早すぎて目で追うことすらできなかった。


「おっと、私の魔法が少しずれてしまったようだな。」

……わざとだ。この圧倒的な力の前に私は何ができるのだろうか。だがあきらめるわけにはいかない

いかない!


「ファイアーアロー」

「ファイアーアロー・絶唱。」

二つの魔法がぶつかり合った瞬間に、私の魔法が飲み込まれた。


「くっ……。」

魔法障壁限界まで分厚くして体を守る。しかし全身が燃えるように熱い。


「ほう、なかなかの魔法障壁だな。」

そういってゆっくりとこちらを観察している。奴隷を人として見ていない、貴族のそういう目が嫌いだ。


「負け、るかぁぁぁ!」

私は体にまとわりついている炎を無理やり拡散させる。


「メルトダウン!」

さっきの貴族の一撃をくらったことでこの魔法の魔力の流れが分かった。


「エアヴェール・絶唱。」

しかし魔力を帯びた空気にせき止められる。私の魔力とはけた違いの密度だった。……絶唱とは何なのだろうか。これを使いこなせなければ私はこの貴族に勝てない気がする。


「メルトダウン!」

もう一度、さっきよりも魔力密度を上げる。しかしあの魔力を帯びた空気を貫通させることはできなかった。これは『絶唱』ではない……。


「一度見ただけで魔法を使えるとはな。素晴らしい。」

「ほめられてもうれしくはないわ。」

余裕の笑みを浮かべている相手をにらみ返す。


「だが私も時間がないのだ。手短に済ませてもらう。ライトニング・絶唱」

「エアヴェール!……があっ!」

空気の層と、魔法障壁を貫通して全身に電流が駆け巡る。すぐに回復をして、魔法を唱える。


「ファイアー……」

「スペースカット・絶唱」

ザクッという音とともに、私の太ももが切られ、地面にくずれ落ちる。


「あぁぁぁぁっ!」

すさまじい痛みが襲ってくる。し、止血を!


「ヒートボム・絶唱」

頭のすぐ隣で、すさまじい爆発音がなり吹き飛ばされる。腕に力が入らない、立ち上がる足も片方ない……。私はその貴族の方を見上げる。


「私もな、奴隷をごみのように扱う貴族どもは気にくわないのだ。」

「な、何を……。」

あなただって奴隷をごみのように扱っているんじゃないの?今もこうやって私を下に見て……。しかしその目はうそを言っているようには見えなかった。本心、なのだろうか。いやそんなはずはない。貴族は平気でうそをつく。


「私もそのような貴族は消えるべきだと思っている。貴様はそれに協力してみる気はないか?貴様の意向に沿っていないと思ったら、再び私を攻撃してくるといい。」

「納得するわけ……。」

「嫌か?」

背筋が凍る。……最初から私は断れる立場ではなかったのだ。私との戦いは、まったく本気ではなかった。


「私は別にいいのだ。貴様が断ろうとな。」

嘘だ。断ったら確実に殺される。そんな目をしている。私がここで死んでしまったら、目的を達成することはできない。……生きなければ。


「は、はい。かしこまりました。……ご主人様。」

「それでいい。」

高そうなコートをはためかせ、後ろを向く。無防備な背中までの距離が、あまりにも遠くに見えた。


「エクストラヒール。」

切られた足や、やけどが瞬く間に治っていく。


「ついてきてください。」

そばにいた黒髪のメイドがそういう。


「……はい。」

そうして私は再び、奴隷になった。


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