リア・ローズ6
「魔物が人間の手助けをしているという報告があったのだが……お前か。」
水しぶきの中から一人の魔物……いや魔族が現れた。この姿、そして圧倒的な魔力密度は確実に普通の魔物ではない。水中から上がってきたというのに全く服が濡れていなかった。
「……理由を聞かせてもらおうか。」
そう言ってこちらを見る。この魔族はただものじゃない。ハーヴェストさんに劣らないくらいの魔力量を感じる。
「いや、待てよ?貴様、本当に魔族か?」
この私の黒い肌は魔族に近いものだが、肌色の部分もないことはない。そこが不審に思ったのか、そのようなことを言っていた。
「私は……人間です。」
「聞いておいてなんだが、その見た目といい、人間とは思えないな。」
私の魔力拡散結界により船の魔力密度は薄まっているはずだが、この魔族が現れてから格段に濃くなっている。船の操縦をしていた二人をすぐに船の中へ非難するように魔法でメッセージを飛ばす。
「人間とは脆弱なものよ。この程度の魔力密度の中では生きることすら許されないのだからな。」
船の中へと駆け出していく二人を見て、魔族がそういう。
「人間を……馬鹿にしないでください。」
強い視線で魔族を見る。グルンレイド領にいると忘れがちだが、確かに人間は弱い。魔法を使えないものが大半を占めているため、基本的に最弱の魔物さえ倒せない。だけど……。
「人間は強いです。」
それを私は学んだのだ。
「戯言を!」
そう言ってファイアーボールが飛んでくる。色が青く異常なほどに温度が高い。
「っ、華流・剪定!」
熱っ……剣が溶けて消えてしまう。魔法障壁を剣にも私の体にもはっていたのだが、かなりのやけどを追ってしまった。治癒魔法をかけつつ、より強い魔力拡散魔法を使用する。
「気分が悪いな、この魔法は。」
魔力密度が五百分の一になっているこの空間で、当たり前のように浮遊魔法をつかい、苦しい様子もなく会話が出きている。
「俺の名前はガーナード、ザヴァル・ガーナードだ。お前の名前を聞こう。弱き人間。」
ザヴァル……。
「……初めまして。私はグルンレイドのメイド、リアと申します。」
そう言って丁寧に頭を下げる。そして顔を上げると、驚いたような表情を見せていた。
「どうか、しましたか?」
「いや、人間にしては完成された所作だと思ってな。」
「それは……ありがとうございます。魔貴族様。」
ザヴァル・ガーナード。その名前は魔貴族の一家である、ザヴァル家の血が流れているという証明に他ならない。
「人間だというのに、知っているのか。」
やっぱりそうだ。この異常な魔力量はただの魔族では考えにくい。もともと魔素のこい海域が、この魔貴族が現れたことによりさらに濃くなったということだ。
「話はこれぐらいにしようか。幼き人間。」
ガーナードの周囲に魔力が集まっていくのを感じる。……くる!
「メルトスピア」
まばゆい光とともに、魔法によって形成された槍が飛んでくる。
「華流……、剣がっ」
先ほどの炎で剣が溶けてしまっていた。そして、ズドンという音がして私の体と船に穴が開く。
「がぁっ……!」
肺の空気がすべて抜ける。
「ほう、治るのか。」
穴が開いた部分に魔力を集中させると、私に空いた穴は徐々にふさがっていく。普通ならば魔力を変換させ回復魔法を使用する必要があるが、私の場合は悪い魔力、すなわち瘴気ををそのまま吸収することができる。幸いここには瘴気が満ち溢れている。
ここでやつを止めなければ私たちは全滅だ。
「ここで、止める。」
私のすべてをかけて、止めて見せる。




