アナスタシア・ローズ12
入学式ではエリザベス様はアナスタシア様にライバル心を抱いているように見えた。アリストクラットの中でも順位付けというものはあるのだろう。
普通に考えれば三大貴族の一つであるマーティン家のエリザベス様がこのクラストップの存在となるはずだったのだ。しかし海外の貴族であれば話は別となる。理由は簡単、基準が分からないからだ。しかしアナスタシア様のあの立ち振る舞いを見る限り、とても位の高い貴族であることは間違いない。
「あの時はごめんなさい。」
お昼時、アナスタシア様がエリザベス様に声をかける。
「い、いえ。私の方こそ……。」
顔には恐怖がありありと浮かび上がっていた。
「どうされましたの?顔色がよくなくてよ?」
そういってアナスタシア様が手を伸ばす。
「だ、大丈夫ですわ。」
そういって一歩後ろに下がる。やはりあの入学試験の一件があってから、エリザベス様は完全におびえ切っている。もちろん私達への態度は全く変わらないのだが、アナスタシア様には強く出られない、というか従順になっていた。
「そうですか。それではお体に気を付けて。ごきげんよう。」
「ご、ごきげんよう。」
初日の威勢は全くなかった。これでこのクラスの上下関係は完全に決まった。
「何見てるの?」
リリィが隣に座ってお弁当を広げる。
「このクラスとトップ2の方々をね。」
「ふーん。ところで成績みた?」
「何?また自慢しに来たの?」
「違うよ、学年トップ10の方。」
あー、確か学年で上から十位までの成績をとった人は、名前を明かされるんだった。
「見てない。」
「というと思って持ってきました。」
リリィが紙を広げた。
一位:アナスタシア・アスター
二位:アメリ
三位:カズト・ホシカワ
四位:エリザベス・マーティン
・・・
やっぱり一位はアナスタシア様だった。
二位は入学式で挨拶をしていたあの綺麗な人。アメリという名前だったのか。そして……カズヤ?あまり聞かない名前である。そして四位にエリザベス様というようになっていた。
アリストクラットが五位以降も占めていると思ったが、そうでもないらしい。一般の学生もちらほら見かけた。
はぁ、それに比べ私は……。こんなんで私は無事に卒業ができるのだろうか。
「アメリさんのクラスってなんだっけ?」
「Bクラスだったはず。」
私の質問にリリィが答える。アメリさんはアリストクラットというわけではない。私たちと同じ平民出身である。
「Bクラス内ではすでに人気者らしいよ。」
確かに頭も良くて美人、おまけに私たち平民にも優しく接してくれるのだ。人気が出ない方がおかしいだろう。
「きっと生徒会からもすぐに声がかかるだろうね。」
「アメリさん、生徒会入るのかな……。」
生徒会に入るメリットというのはたくさんあるが、生徒会に入るまでが大変だ。上級生からの推薦、学力と魔法力が基準を満たしているか、などなど私には到底届かないような条件が並べられている。
「そうなるとアナスタシア様とは仲良くできなくなっちゃうね。」
「なんでそこでアナスタシア様……」
私の呟きにリリィが答える。
「だってアリストクラットと生徒会は仲が悪いでしょ?」
「確かにそうだけど、別にミアには関係ないんじゃない?」
「うーん……。」
関係ないと言われたらそうなのかもしれないけど、でもなんか気になる。
「アメリさんにはアナスタシア様と仲良くなってほしいなー、なんて思ったりして。」
アメリさんだけではない。もっとたくさんの人がアナスタシア様のことを見てほしい。なんでこんな気持ちになるのかは私自身よくわからないけど……。
「変なの。まあ、私も貴族の中ではマシだと思うけどね。」
リリィはあまり貴族のことを好きではないようだが、アナスタシア様は嫌いではないらしい。私は好きだけどね、アナスタシア様。杖がぶつかっても許してくれたし。
「でもアメリさんなら大丈夫じゃない?」
「どうして?」
私はリリィに聞き返す。
「ま、なんとなく。」
「なんとなく……?」
なんとも投げやりな回答だったが、正直わからなくもない。一度しか見たことがない彼女だが、偏見とかそういうのに惑わされない感じがした。
「今度アメリさんに話しかけてみるよ。」
「いいね。その時は私も誘って。」
私はこれから始まる学園生活に身を膨らませる。魔法以外にもここでは学べることが無数にあるはずだ。友達作りだって無駄じゃない。魔法の成績を気にしないように、そう自分に言い聞かせた。
「ミア?学生の本分は魔法だからね?」
「はい……」
評価シートをポケットに隠したところを見られ、リリィに一言付け加えられた。




