天界編:邪神5
「コトアル、どうしてここに!」
私は後ろから現れたコトアルに驚く。マークには保護するように指示していたはずなのだが……。
「申し訳ありません。イザベラ様、邪神の相手を私にさせてください!」
「……そういうことですか。」
大体の状況は理解した。コトアルの意志でここにいるということであれば、私はそれを止めることはできないだろう。マークもコトアルの意思を尊重してここにくることを許したはずだ。
「かまいません。ですが、必ず勝つと約束してくださいね。」
「かしこまりました。」
グルンレイドのメイドとして、生きて返ってくること。これさえできるのであれば私から言うことは何もない。頭を下げ、コトアルは邪神の元へと飛んでいった。
「二人とも、私たちの相手はあの聖族です。」
ロンドの方を向き、そのようにいう。聖力的にはイリスの方が強い気がするのだが、邪神を操るようなことをやっているのだ。警戒するに越したことはない。
「邪神よ、こちらへきなさい!」
ロンドは私たちを警戒してか、邪神をこちらへと呼び寄せている……が、一向にこちらにくる気配はない。
「コトアルの相手で手一杯なのでしょうね。」
「馬鹿な!神を足止めできる存在など……」
マークのアドバイスを聞いてうまくあの力を“覚醒“できれば、邪神など相手にならないでしょう。勇者の力はそれほどまでに強大なものだ。
「いますよ。グルンレイドですもの。」
私は異空間から剣を取り出す。
「二人とも。周囲に衝撃波が伝わらないように、魔法障壁で囲ってください。」
かしこまりましたという返事が聞こえる。カルメラとハーヴェストを連れてきた理由は一緒に戦ってもらうためではない。私の攻撃によって周囲を破壊してしまうということを防いでもらうためだ。
「邪神がそばにいないあなたは、一体どれほどの強さなのでしょうか?」
「くっ……ホーリースピア」
光の槍が飛んできて、私の額に直撃する。
「まあ、四天王程度の強さ、というところですね。」
「効いてないのか!?」
私の魔法障壁を舐めてもらっては困る。これを破ることができるのは、ご主人様、スカーレット、狂乱状態のヴァイオレットくらいだろう。
「華流・」
私は剣に魔力を流し込む。
「一線」
聖法障壁を破壊し、肉体を切断する。そのエネルギーは止まることを知らず、ハーヴェストの魔法障壁に直撃しそれを破壊する。弱まったエネルギーはカルメラの無唱詠唱によってかき消された。
「お疲れ様です。」
「軽い運動にもなりませんでしたが。」
私が体を切断した瞬間にカルメラが回復を始めたので、きれいな状態でロンドは横になっていた。死ぬほどの衝撃を与えると少しの間精神と肉体が離れてしまうので、どれだけ肉体を回復させても目を覚ますことはないだろう。だが一応すぐに魔法による枷をつける。
「案外あっけないですね。」
「そうですね……ですが、私はこれで終わるとは思えません。」
ハーヴェストにそう答える。邪神を強制的に支配できるような悪どい存在が、そう簡単に人前に姿を見せるとは思えない。
「それは……」
「あなたは気にする必要はありませんよ。スカーレットが動いていると思いますから。」
そちらはスカーレットに任せ、まずはコトアルと戦闘している邪神の行く末を見守る必要がある。




