天界編:邪神4
「ご主人様!」
私はすぐに魔法障壁を展開し、ご主人様とイリスを守る。
「メアリー、そのままご主人様を守っていてください。」
「はい。」
イザベラ様はそう私にいうとロンドの元へと向かいながら、次々に指示与える。
「スカーレットはご主人様の守護に加わってください。」
「かしこまりました。」
「マークとヴィオラはコトアルの元へ!カルメラとハーヴェストは私に続いてください。」
「おう!」「はい」
「「かしこまりました。」」
メイド長は二人のメイドを連れて、邪神とロンドに向かっていく。そしてすぐにスカーレット様のパーティが私の元までやってくる。
「リア、さっきの攻撃はどうだったかしら?」
「私の魔法障壁には傷ひとつついておりません。その程度の攻撃力でした。」
「そう。それならよかったわ。」
だけど気は抜かないようにねと付け加えられた。確かにあの“神撃“という技は、この魔法障壁に傷をつけるほどの威力だった。気をつけなければ。
「ヴァイオレットとアシュリーは周囲の警戒を。メルテは私についてきなさい。」
「は、はい!」
そう返事をしてメルテはスカーレット様の近くへと走っていく。そして残りのマリーローズ二人はご主人様の近くへ。
「辛かったらすぐに言ってね、メアリー。あ、後血が出ても言ってねー」
「馬鹿にしないで!」
私はアシュリーを睨みつけるが、
「かっわいいー!」
そんなことを言ってまた馬鹿にしてくる。いつまでも子供扱いをして……。本当に嫌い!
「メアリー様、私は何をすれば……」
イリスが恐る恐るそう聞いてくる。
「聖法障壁を張って。魔法と聖法が合わさるとより強固になるから。」
「はい!」
マリーローズが三人もいるのだ、例え邪神が100体現れたとしてもご主人様に傷がつくことはないだろう。
—
「マーク様、私……」
「一旦ここを離れるぞ。ヴィオラに捕まれ。」
「……いえ。」
ここを離れて体勢を立て直すのが最適だ。しかし、
「このまま戦わせてください。」
マーク様の目を見てそういう。
「そんな目で見るなよ……。」
私の手で、邪神を止めたい。そんな思いが溢れ出てくる。
「コトアル様、いいですね。そんな感じです。」
ヴィオラ様がそういう。確かに意識していなかったが、これは傲慢だ……。
「おいヴィオラ!怒られるのは俺なんだぞ!?」
「なら尚更問題ありませんね。私は背中を押しますよ。コトアル様。」
主人に仕えるメイドとしてどうかと思うが、それも信頼関係があるからこそできることなのだろう。
「はぁ、わかった。」
「え……」
「ほら、なんて顔してんだ。」
「いいの、でしょうか?」
私はてっきり“やっぱりだめだ“と言われると思っていた。
「あぁ、いい。」
そう言って優しく背中を押された。その手のひらからは力強さが感じられ、私を前へと押しやった。
「マーク様、すみません。」
「気にすんな。俺も自分の力が失われてなければ敵に向かって走っていたところだ。」
優しい人だと思った。勇者の力が宿ったのがマーク様……ではなく、マーク様だから勇者の力が宿ったのかもしれない。その力が今は私の中にある。この人のような人間に私はなりたい、そう思った。




