天界編:神殿6
「コトアルは……どうなったんですか!」
ご主人様にそういう……が、返事はない。
「ご主人様!」
目の前にあるコトアルの無残な姿を見れば一目瞭然だった。ただ、私は信じたくないのだ。私と同じ“グルンレイドのメイド“がこの世から消えたということを。
「この状況では生きておらんだろうな。」
邪神がそういう。
「……黙れ。」
私はそう呟く。
「メアリー様、ご主人様の指示を……」
イリスが何か言っているが、私の耳には届かない。
「我の神撃を受けて、まだ原型をとどめているとは。これを作ったもののおかげだろう。だが、けじめはつけなくてはいけないな。」
再び神もどきに聖力が集まっていくのを感じる。
「グングニル」
「黙れと言っている!!エアヴェール・絶唱!」
私は飛び出し、魔法障壁を展開する。
「今更守っても、もう遅いだろうに。」
「これ以上、お前の聖力に触れさせたくない!」
同じマリーローズとして、これ以上の愚行を許してはおけない。
「そうか、ならば守ってみろ。グングニル」
「フリーズサイクロン・絶唱」
ドーーンという音とともに、二つのエネルギーが爆散する。周囲を見渡すと、ところどころの空間が歪んでいた。
「イリス、私のそばを離れるな。」
「は、はい!」
ご主人様のおかげで私たち無事だった。本来であれば私がご主人様を守らなければいけないのに、逆に守られてしまっていたという事実に心が痛い。
「コトアルに攻撃はさせない。」
「だからもう動かないガラクタだと言っている。何をそんなに怒っている。」
「コトアルの意思を、馬鹿にしないで!」
「馬鹿になどしていない。敬意も払っていないがな。」
会話をしてわかる。この存在は正真正銘の災害。この行為に何の意思も介入していない。何も考えてはいないのだ。
「ホーリー……」
「セイントバニッシュルーム・絶唱」
周囲の聖力が拡散されていく。邪神の聖法が強制解除される。
「この程度で、止まると思うな!ホーリースピア!」
「なっ!」
メアリー様の脇腹をかすめる。そこからは血が流れていた。この拡散率の中であの威力を出せるのは異常といってもいい。
「セイントアロー!」
「エアヴェール・絶唱!」
メアリーさんのエアヴェールを貫通する、が拮抗していた数秒の間に軌道から体をずらしていた。
「ファイアーアロー・絶唱!」
「ぐっ……なかなかの攻撃力よ。」
メアリー様の魔法をくらってなおしゃべる余裕がある。邪神とは私が思う以上の最強、最悪の存在なのかもしれない。
「はぁ、はぁ、アイスロック・絶唱!」
透明の氷が邪神を包み込む。邪神は氷漬けになったが……落ちない!徐々に表面にひびが入り、割れる。
「この威力……貴様、我のもとへ来る気はないか?世界にまき散らす災害として、その力は大いに使える。」
「断る!」
「そうか、残念だ。これほどの存在をここで消すことになるとはな。」
神撃。そう聞こえた。エネルギー体は光速を超えて、メアリー様に向かっていく。




